2011年6月27日月曜日

第78号(2011.06.27)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第78号
□───────────────────――2011.06.27─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.078
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


フロリダでは最近、非常に暑い日が続いています。天気予報で華氏100度を示すこと
さえあります。そして毎日、必ずと言っていいほど夕立がやって来ます。日本で雷
を伴なった豪雨といった感じです。1時間もすれば止みますが、あまりの激しさに
ちょっと面食らうこともあります。

夕立がいつ頃に止むのか?さらに厳しくなるのか?という不安がありますが、報道
機関からの天気情報はそのような心配を払拭します。かなり具体的で詳細なデータ
なので、雨雲があとどれくらいで通りすぎるのかが分かります。雨雲の状態を3Dで
表現したり、局地的なデータが提示されるので、とても便利です。素人ながらに、
日本でこのようなシステムを導入すれば、ゲリラ豪雨など対策に利用できるのでは
と思いました。


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■アメリカ短信 > Web2.0ツールの段
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☆関連サイト:

こちらではMacな日々を過ごしています。もちろん研究所で英語版Windowsのデスク
トップを用意してもらっていますが、毎日、MacBookを持参しています。例えば、
メインキャンパスへ向うシャトルバスの中ではiPhone4をいじり、自宅ではiPad2で
ネットへアクセスしています。帰国後は、MacとWinPCとの共存になるでしょうから
これらのディバイスとのデータ交換が効果的にできるような手法を覚えています。

まず、Blogやメルマガなどの原稿やメモ書きは基本的にエディタを使っています。
Macにもmiを入れてますが、Evernoteでほぼ代替できます。毎日使うことでやっと
操作にも慣れてきた感じです。様々なTIPSがあると思いますが、残念ながらまだ
そこまで至っていません。

そして、情報整理のツールとしてのDropboxには、少しずつデータのバックアップ
を入れています。写真はPicasaで管理して、整理したものをウェブアルバムへも
置くようにしています。論文や文献のPDF管理はMendeley、読書管理はブクログと
便利なツールへ徐々に移行中です。

さらに、自分の情報発信はこれまでコジマガのMLだけでしたが、ブログ、Twitter
などを試しています。Twitterは150程度のつぶやきから、仕組みなどがようやく
実感できはじめました。しかし、FBは未だに様子見です。どちらも半オープンな
ツールなだけに不用意に投稿しないよう気遣っています。Blogは、研修開始以来
300日以上書き続けています。でも、文字情報が中心で、ブログツールにはあまり
関心を払っていませんでした。ブログツールを利用すれば、最近流行りのSNSとの
コラボが簡単に実現できるので、上手く組み合わせてるテクニックも覚えた方が
よさそうです。マーケティングツールとしてこれらが重宝されているのが、よく
分かります。

インターネットの音楽配信サービスでは、Sky.fmやLast.fm、Pandoraを利用して
おり、仕事時間のBGMとして活躍中です。これらで驚いたのは、Sky.fmにJ-Popの
ジャンルがあること、Pandoraは上場で2億ドルもの資金を調達したことなどです。
日本のサービスとはあまりに差があり過ぎて、厳しい規制ととも硬直化した日本
の業界の将来に不安を覚えます。優れた技術はあっても、素晴らしいアイディア
や新しいビジネスを創発する環境にないことは確かです。

こうして振り返ると、ネットの世界ではアメリカが断然優位に立っていることが
よく分かります。ハードだけでなく、ソフトの分野においても日本の活躍を期待
しています。


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■UCFから > Leaders Summitの段
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☆関連サイト:http://www.aascu.org/

AASCUが主催する'The Leaders Summit 2011'が、UCFで6/23,24の2日間に渡って
行わました。American Association of State Colleges and Universitiesの略
なので、AASUCにはアメリカ州立大学協会という訳が当てはまるように思います。
このカンファレンスはEDUCAUSEとのジョイントですから、ICTの話題が中心です。
サブタイトルには'Designing Learning Environments for the 21st Century'が
付けられていますから、今の学生に適した学習環境を構築するかという内容です。

今回は、全米18の州立大学からリーダー達を中心として、総勢80名ほどが集まり
ました。参加大学に共通する点として、とりわけ大きな大学でなく、それだけに
大学の使命である教育をいかに効果的かつ効率的に運営するかという問題を抱え
ていることです。そこで、問題意識の共有に加え、現状を見つめソリューション
やその手がかりを掴もうというのが会の狙いです。

確かにフロリダも他の州と同様に、厳しい予算カットが実施されています。逼迫
した財政事情の中で、いかに次のステップを見い出すかという点ではUCFは良い
事例になるでしょう。急増する学生、変化する学生に対応して、新しい学習環境
をICTで創造し続けている先進事例は大きな参考になるはずです。

さて、会議は参加者にUCFや主催者のスタッフを含めると100名以上になるために
メイン会場は隣の建物であるパートナーシップ3で行わました。研究所のフロア
だけでは手狭なことから、広い会場を確保することで、軍の施設を借りました。

初日は朝8時半のスタートです。主催者の冒頭の挨拶で、基調講演が変更になる
という連絡がありました。フライト欠航の影響で、EDUCAUSEの会長が来られなく
なったそうです。基調講演がキャンセルになるというハプニングが起こっても、
慌てることなく、うまく対応する運営には感心します。

3つの講演に続き、4つの事例を担当者から聞くというイベントがありました。
4つのパーラーで構成され、参加者はこれらを20分ごとに回るというものです。
具体的な教育事例の紹介として、心理学・数学・英作文の各責任者が取り組みを
説明します。また、今の学生たちがよく利用するICTツールの紹介もありました。

昼は用意されたランチボックスをいただきながら、次の講演へと入ります。休憩
を挟みながら午後5時20分まで研修は続きました。1日目の最終イベントで懇親会
が開催され、ここでUCFの総長を直にお見かけました。恰幅のよいおじいさんで、
すでに73歳だそうです。主催者からの紹介コメントで驚いたのは、何と20年以上
もトップの職を務めているそうです。UCFは創立47年目ですから、半分近くの間
ガバナンスしていることになります。

事実確認もかねて同僚に事情を聴けば、UCFの総長は選挙で決定されるのでなく、
州からの指名だそうです。確かに州立大学ですから上手く経営できる人物を州が
選ぶのも当然でしょう。無能な人物によって放漫経営をされたら、州として住民
に説明がつきません。大変納得するとともに、何ともアメリカらしい制度に感心
しました。

自分が知っているだけでも、今の総長はITを活用し、経営効率を向上させるとも
に大学の名声を上げることに成功しています。巨大なアメリカンフットボールの
スタジアムを建設して、大学の人気を高める努力を続けています。(アメリカの
大学のトップはオペラからアメフトまでの話ができないと務まらないという記事
を読んだことがあります。)さらに、昨年オープンしたの医学部に続き、歯学部
も新設予定になっています。かなりやり手のリーダーであり、まるで企業経営者
のようです。アカデミックキャピタリズムの国ですから、優秀なリーダーの存在
が大学にも求められるのでしょう。

AASCUの2日目は、開始時間がさらに早まり8時からです。多くの人は前日の疲れ
を残しているはずですが、司会者は結構な高齢にも関わらず、元気が漲っている
という感じです。やはりこのような会をマネジメントできる人はエネルギッシュ
でなければなりません。

この日のイベントはできるだけ参加型にする工夫が見られます。例えばグループ
ディスカッションは3グループに分け、発言をしやすくしています。また、全体
ミーティングでも、壁に貼られた大きな紙にそれぞれがアイディアを書き出して、
共有するという仕掛けがみられました。

全体ミーティングも正午で終了です。最後は、出席者にアハ体験を語ってもらい、
締めくくりです。詳細まではわかりませんが、この会で獲得できたものは大きい
ようです。1日半のタイトなスケジュールでしたが、それでも出席者は満足した
様子でした。生産性の高いミーティングをオーガナイズすることの重要性を体感
しました。このような大会にオブザーバとして参加できたことはラッキーでした。


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■編□集□後□記□
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AASCUの会場ではiPad2を使っている人を結構、見かけました。スマートカバーを
台座にしてメモを取ったり、メールをチェックしたりしていました。やはり驚い
たのは、カメラを使って必要なスライドを撮影していたことです。10インチ以上
の画面で撮影している姿はちょっと異様な感じがします。

2011年6月11日土曜日

第77号(2011.06.11)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第77号
□───────────────────――2011.06.11─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.077
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


今回で第3回目となる全国大学対抗タイピング大会(学内予選)がTIESで開催中
です。今年は在外研修中につき傍観ですが、情報処理の授業の中扱っているので、
NGUからの参加者は加盟校でも断トツの規模を維持しています。また、現在、個人
部門でも1位、2位と活躍しており、喜ばしい限りです。

実際のタイピング大会の状況は、TIESにログインするのが一番でしょう。TIESの
アカウントについては、コジマガ第32号に書いた通りですので、興味のある方は
是非、ご参照ください。


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■アメリカ短信 > 「豊かさとは何か」の段
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☆関連サイト:http://bit.ly/kojimag068

アメリカで生活をしていると世界中のさまざまな国に出会います。出身の人々で
あったり、食事などの文化であったりします。国際的な政治経済情勢についても
まるで自国の出来事のごとくニュースで扱っています。さすがに世界から多くの
人を集めている国だけあります。

コジマガ第68号でも書きましたが、平均的な個人宅に訪れるとこの国の豊かさを
実感します。庭付きの広い敷地にガレージと自宅があり、ほとんどがプール付き
です。プールの使い方はただ泳ぐだけでなく、プールサイドにテーブルを出して
涼みながらのパーティに使われます。プールサイドにはカウンターを置き、飲み
物や食べ物を思い思いに取りながら、初めて合う人同士が会話で盛り上がります。
BGMは、ノートPCでインターネットラジオにアクセスし、外付けスピーカーから
流れてきます。もちろん気が向いたらプールで遊んだりします。

日本でプール付きの自宅を持つ人は億万長者に限られます。自宅でのパーティと
いう文化が、プールとセットになっていません。屋外プールの利用期間は3ヶ月
程度ですし、敷地代外にもメンテナンスで費用が発生します。それならば、屋内
プールを持つスポーツクラブの会員となった方が世話入らずで、結果として安く
上がります。

クルーズコントロール付きの大きな車で優雅に走行し、長距離の移動も可能です。
道路や駐車のスペースは広く、渋滞も日本ほどひどくないので、平均速度は日本
よりも上です。さらに高騰したガソリンも比較すれば日本より安いという、完全
な車社会になっています。また、携帯電話はすでに4Gへ向かっており、GPSでの
サービスも日本より進んでいるように思います。

このようにアメリカの生活環境を考えると、余裕が感じられます。経済力のある
日本から見ても、アメリカにはかなり多くの魅力があります。もちろん、個人の
経済的な裏付けは最低条件ですが、安定収入や将来性が保証されるのであれば、
閉塞感が漂う日本にいるよりもいいかも知れません。経済発展途国の出身者なら
ば、なおさらこの国に惹かれるでしょう。世界中の国々から多くの人が集まって
くるのも、首肯できます。

英語圏で生まれ育った人以外は、皆、英語を覚えて、この国で生活をしています。
経済力を身につけて言葉や生活習慣を身につければ、自国で暮らすよりも快適な
生活を送ることができます。この国で暮らしてみて「豊かさとは何か」を改めて
考えてしまいます。


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■ 本の紹介
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☆関連サイト:http://bit.ly/mckK4L

『歴史は「べき乗則」で動く』,マーク・ブキャナン著(水谷淳訳),ハヤカワ文庫
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渡米して2冊目(電子書籍も含めると正確には3冊目)となる日本語の本を読了
しました。自分の研究材料にもべき乗分布が関連していることもあり、これまで
ネットワーク理論関係の書籍を集めていました。この本はタイトルを見ただけで
購入し、所謂「つんどく」状態になっていました。文庫なのでさほど重たくなか
ろうとアメリカまで持ってきた次第です。とはいえ、なかなか手付かずのままに
なっていたのをようやく読み終えたところです。

内容はネットワーク理論や自己組織化の話です。その一例として、阪神大震災や
ブラックマンデーについて言及されています。この原本(『歴史の方程式』)が
最初に世に出た後、たった10年で「想定外」規模の大惨事(リーマンショック、
9.11や東日本大震災など)が起こるとは、誰にも予見できなかったと思います。
リーマンショックは100年に一度で、東日本大震災は1000年に一度だそうですが、
このような稀有な出来事が10年の間に生起するものだろうかという問いがあると
すれば、きっと著者は肯定するでしょう。

地震に関する話題はかなり詳細に述べられています。この本でも指摘されている
ように、阪神大震災は事前に全く想定されていませんでした。その後、活断層が
起因する地震について注目が集まりました。また、核融合の話まで扱われており、
反応炉に制御棒で反応を抑えるトピックスには、3.11を想起してしまいました。

地震の規模と発生頻度をグラフにすると「べき乗分布」が確認されます。つまり
スケールフリーの巨大地震は必ず起こるということです。一方で、研究は予測に
必要な発生時間・場所・規模を特定できるレベルにないことも述べられています。
また、発生のサイクルを歴史から探ろうとしても、100年程のデータでは46億年
ともいわれる地球の歴史からすれば、ほんの一瞬の動きを捉えたに過ぎません。
巨大地震の発生に関する誤差の範囲は、明日かも知れないし、50年後なのかも
ということは、全く役に立たないことを意味します。人間の一生の時間と地球の
活動時間にあまりに大きな格差があります。

この本でネットワークや自己組織化、臨界状態の形成に関する事例は、森林火災
の延焼、生態系の変化、絶滅種なども取り上げています。これは集団的振る舞い
がシステム全体の臨界状態を作り出し、あるきっかけでそれが一瞬にして崩れて
しまう事象です。文中にある表現では「何かが変わるためには、歪みがある限界
を超えなければならない」ような事例を説明しています。

また、第10章では金融経済の話としてブラックマンデーを扱っています。株価が
世界同時に大暴落する理由を、ネットワーク理論で説明しています。この内容は
『ブラックスワン』でのリーマンショックへの言及箇所と重ね合わせながら読む
と良いかも知れません。さらに人間の繋がりの説明には、ミルグラムの実験から
ネットワーク理論へと話が展開します。本の最後の部分では、トーマス・クーン
のパラダイム理論(学説ネットワーク)まで及び、革命や戦争の発生という歴史
に臨界状態を見い出そうとしています。

確かに90年代初め、都市銀行は13行もあり往時のバブル経済を謳歌していました。
しかし、バブル崩壊で巨大金融機関は淘汰、合併が進みメガバンクへ再編されて
います。バブルの宴の中では、悲惨な結末を全く予想できませんでした。そして
万一、日本が財政破綻した場合、どのような議論が噴出するのでしょう。やはり
「想定外」という言葉で責任を回避するのでしょうか。この言葉が論点になって
いる時機にこそ、読んでおくべき本であるように思います。


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■編□集□後□記□
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アメリカでは5月末の祝日であるメモリアルデーを迎えて、いよいよ夏が始まり
ました。すでに真夏のフロリダでは、本格的なハリケーン・シーズンが到来した
ようです。こればかりは来てもらいたくないと願うばかりです。

1年間のサバティカルなので、8月末で研修終了です。フロリダでの研修生活も
残すところあと3ヶ月となりました。早いもので、研修ブログは284日を更新し、
カウントダウンです。出発前に皆に言われた「慣れた頃に帰る」ということが、
まさにその通りになってきました。