2016年7月20日水曜日

第126号(2016.07.20)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第126号
□───────────────────2016.07.20─
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.126
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


今年の海の日(7/18)も大学は授業営業日で、名古屋港では花火が上がりました。
まるで日を合わせたかのように、東海地方で梅雨が開けました。本格的な夏の訪れ
で、いよいよ大学にも学期末が来たことが感じさせられます。

さて、不思議なもので卒業生の来訪が続く時期があります。大学には5月11日から
大学4営業日連続で、高田くん、上野くん、曽我くん、志知くんが来てくれました。
また、その週末には東京より奥田くんが訪ねてきてくれました。いずれの卒業生も
わずかな時間でしたが、いろいろな話を聞かせてもらいました。一人ひとりが自分
らしい人生を生き抜いており、大変嬉しく思いました。不透明な世の中をどう生き
てゆくか?人の真似もできない、答えのない一番難しい問題です。


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■NGU短信 > 授業アンケート全面CCS化の段
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☆関連サイト:http://kojimag.blogspot.jp/2015_12_01_archive.html

コジマガ122号で紹介したCCSを活用した授業アンケートを、今年度から全面的に
CCSで実施しました。同時に、従来の紙での回答用紙を廃止しました。そのお陰で、
終了日翌日にアンケート結果を教員側に提示できるようになりました。学期内に
授業は3回あるので、アンケート結果を教員から学生へフィードバックできます。

また、大学の限界費用はゼロで実施科目を増やすことに成功しました。今学期は
全学で1,353科目が開講されており、授業アンケートは全科目を対象としました。
ただし、10名以下の少人数科目やリレー科目・再履修クラスなどは除外しました。
結果として、全体で1107科目という過去最多の実施科目になりました。

さらに、受講生からの全回答数は3万件を超え、これも最多記録を更新しました。
学生の協力には本当に感謝です。学生には基本的に授業時間内でスマートフォン
から回答してもらいます。スマートフォンがない場合には、大学が配付している
ノートパソコンや学術情報センターや図書館で、パソコンから時間外に回答して
もらうという対応をしています。名古屋キャンパスでは学内教室にも無線LANが
整備されているので、アクセシビリティには問題ありませんが、大教室では同時
接続で支障が出るケースもあります。混雑時には公衆回線からのアクセスを回避
策としてお願いしています。

紙からWebへ切り替えたことで極めて大きな成果が得られました。ただし、1科目
でも紙での回答方式を残すと全体へ結果の返却がかなり遅れます。従来の方式を
好む人を犠牲にする側面があるだけに、導入には慎重を期してきました。飛躍的
なステップアップには「光と影」があり、全員が喜ぶわけではありません。特に、
イノベーティブな制度変更には様々な軋轢を生みます。そのようなことを減らす
ために、完全実施までに1年間をかけて試行し、組織的な手続きもきちんと進め
てきました。それでも炎上という状況になることもあります。

革新的な製品やサービスを受け入れる態度は人によって異なる理論については、
M.ロジャーズの名著『イノベーションの普及』で詳しく説明されています。簡単
に説明すると以下のようです。まず、イノベーター(革新者)の試行から始まり、
オピニオンリーダでもあるアーリアドプタ(初期採用者)が有用性を見極めた上
で、これらを採用します。続いて、慎重姿勢のアーリマジョリティ(前期追随者)
が選択をすると、徐々に周りの皆がやるのならばという理由から懐疑的ながらも
重い腰を上げるレイトマジョリティ(前期追随者)が動くようになってきます。
最後のグループがラガード(遅滞者)で、全く興味を示さず従来通りのやり方に
拘泥する人々がいます。

例えば、携帯電話ならば、最新スマホ機種をすぐに購入する人もいれば、今でも
なお携帯電話を持っていない(頑なに拒んでいる)人もいます。必要性が普及の
大きな要因であるだけに、学生のスマホ所有率は100%に近づいています。一方、
教員は(他の社会人と比べても)なかなか進んでいないのが現実です。

ICTの教育環境を考えれば、本学では2002年からCCSが稼働しており、全新入生に
ノートパソコンを配付しています。他大学と比較してもイノベーティブな大学で、
活用環境はかなり進んでいるはずです。それゆえ、授業アンケートをすべてCCSで
実施することも障壁は比較的小さいと考えていました。たしかに学生の回答への
協力姿勢は眼を見張るものではありましたが、先進的な大学であっても多くの教員
がいると一筋縄ではいきません。新制度に慣れるまでには、しばらく時間が必要だ
と思います。

まだ授業アンケートをWebのみで実施する大学は全国でも少数で、すでに全面的に
実施している関東の大学は数校です。本学の取り組みは東海地区において先進校を
目指していますが、近いうちにほとんどの大学でWebでの全面実施が採用されると
思います。


────────────────≪  books ≫─
■本の紹介 『未来化する社会』
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☆関連サイト:http://kojimag.blogspot.jp/2016/05/nagoya-gakuin-university-faculty-of.html

『未来化する社会』,アクレック・ロス,ハーパーコリンズ

2016年春に出版された最近の本です。サブタイトルは「世界72億人のパラダイム
シフトが始まった」となっています。著者は、ヒラリー・クリントンが国務長官
時代に側近として世界を見て回っています。この体験をまとめて、世界の潮流の
変わり目について述べています。現在では想像すらできない大きな変化が世界中
にやってくることを副題が表現しています。インターネットがもたらす未来への
大変革というテーマでは、コジマガ第48号で扱ったトーマス・フリードマンの著作
『フラット化する社会』と共通しています。

この本では、日本人が自国について述べるのでなく、米国人から見た日本という
視点もあり、大変興味深い箇所もありました。例えば、日本の産業優位性として
ロボット産業を筆者は取り上げています。この分野の世界の先進5カ国(日・米・
独・中・韓)にはそれぞれに特徴があり、日本は市場のニーズの高まりもあって
介護ロボットで最先端ということを説明しています。反面、日本の弱さとしては、
女性が活躍できない社会構造を挙げています。隣国の中国は女性が多分野に進出
していることを引き合いに出し、安倍内閣の経済成長戦略にも言及している部分
があります。

筆者の話題は最新テクノロジーと世界経済に及びます。フィンテックとしては、
ビットコインなどのデジタル通貨がどうなるか。特にブロックチェーンの技術が
登記の概念を根こそぎ変えてしまう可能性があるという指摘に好奇心が湧きます。
利用者のレーティングから「信用のコード化」はさらなる進展が期待されます。
また、先進国だけでなく後発組であるアフリカなどに大きなチャンスがあること
を説明しています。何もないところから最新の金融システムを導入すれば、従来
型の発展形態を飛び越える可能性があることに驚きます。今後、情報通信技術が
磨かれ、実用範囲が拡大すると利便性が高まると同時に、将来的には必要のない
職業が出てきます。ガラパゴスの日本では、政府の遅い対応や日本語の壁がある
ので、これらが防波堤の役割を果たしてくれると思いますが、ネットの技術革新
という大津波の第2波は必ずや訪れることでしょう。

一方、今後も絶対に失われず必要度が高まる職業として、サイバーセキュリティ
技術者を挙げています。「冷戦(Cold War)」から「Code War」へと移った世界
では、サイバーアタックが益々激化しています。これを収束するルール(国際法)
が不十分な状況だけに納得させられます。

他にも、スーパーコンピュータ活用とゲノム、これをビジネスとするゲノミクス
の進展が注目です。日本が遅れている分野であり、隣の中国が先進国になるかも
という状況には、アジアの成長として考えるのもよいでしょう。ビックデータの
活用方法、シリコンバレーは世界中にできるか?など興味深い話題が盛り込まれ
ています。

自分が知らないことが多いと、批判的思考で読書はできませんが、まずは理解が
重要です。理解するには多様な知識が必要となりますが、ネットをググりながら
読み進めるのもよいでしょう。小生の読後感は「知らない現実が理解でき、また
少しだけお利口になれた」です。


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■最近のゼミから > 春学期のイベントの段
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☆関連サイト:http://expo.nikkeibp.co.jp/cloud/16/ngy/

早いもので、明日のゼミが最後のまとめの発表になります。3年生の4チームが
30分で卒業生向けに分かりやすい発表をしますので、お時間のある方は、是非
ご参観ください。3年ゼミ長がFacebookから日時・場所とともに飲み会の案内を
しています。併せて確認いただけると幸甚です。思い出すと、20年前の今日は、
ゼミ合宿でした。今も昔も学期の終わりにまとめをしていたことが分かります。

さて、6月は2週連続でイベント的なゼミになりました。まず、6/9のゼミでは
大宝小学校の先生方(約20名)が来学し、アクティブラーニングの現場を見学
されました。通常の406教室(パソコン教室)から大教室へ変更し、1チーム
(チーム山下)の発表と質疑応答を参観していただきました。ゼミ生らが退室
後、児島から「大学におけるアクティブラーニングの現状」を報告し、先生方
とディスカッションしました。文部科学省は教育機関に対して学生の主体的な
学び(アクティブラーニング)を強く求めています。小学校にもアクティブで
深い学びが要求されるとのことで、本学の社会連携センター(家本先生)から
見学の依頼がありました。そこで、ゼミでチーム研究を進めている児島ゼミに
白羽の矢が立ったという次第です。

翌週のゼミ(6/16)では、秋葉原でベンチャー企業を起業した服部社長と人事
の石橋さんをお招きしました。同日、名古屋国際会議場で日経ITpro EXPO 2016
in 名古屋が開催され、出展企業として来名しておりました。そこでゼミの中で
「社長が求める大学生とは~大学時代にすべきこと~」という内容でお話して
もらいました。また、人事は学生をどのように見ているのかについても語って
いただきました。3年生は就職意識を持つこと、4年生は就職後3年で3割が離職
する状況でどう考えればよいのかが勉強できたと思います。また、お二人には
少し早めに来学していただき、3年生のチーム研究を見てもらいました。

いよいよ学期末です。3年生は最後までしっかり駆け抜けてもらいたいものです。
そして、就職前最後の夏休みだけにいっそう充実できるように期待しています。
もちろんゼミでの宿題も用意しているので、「よく遊び、よく学べ」るように
します。一方、4年生ではすでに一部の有志がサブゼミを開始しています。まず
研究報告書の見直しからスタートしながら、徐々に卒論の意識を高めてもらう
予定です。


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■編□集□後□記□
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前号(コジマガ第125号)を発行して、コジマガのブログサイトのビューが5,000
の大台を超えました。これまでの動向を統計データで見ると、2012年(第87号)
から各号に10以上のアクセスが見られます。この調子で推移すれば、1万超えは
第200号を発行する頃に到達できるのではと予想します。もっとも、ゼミ生のみ
の限定公開だけで運用しての場合です。広く公開すれば、もっと早く到達する
かもしれませんが、コジマガの読者はゼミの卒業生なので数字を求める必要は
ありません。



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