2018年11月10日土曜日

第144号(2018.11.10)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第144号
□───────────────────2018.11.10─
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.144
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


収穫の秋です。春から育ててきた大切な作物を収穫できたことへ感謝する祭も
国や宗教を超えて行われます。アメリカのThanksgiving Dayも今月の第4木曜日
です。大学でも4年間の学修成果として、立派な卒業研究やしっかりとした卒業
論文を一人ひとりが取り組む時期であると思います。


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■NGU短信 > 「主体的な学び月間」の段
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今年度から新たに「主体的な学び月間」を設定しました。これは学生の自主的
な学びを大学として促進する取り組みです。秋学期は学生による発表会などの
学生が関わるイベントが多いため、全学へ取り組んでいることを周知していく
ことで、学生に興味や関心を与える機会としたいという趣旨で設置されました。
現在、各学部や部署で実施している情報を収集している段階です。

本学における教育の弱点としては、教員が一方的に教えてしまうことで学生が
主体的に学ぶ機会が少ないという点です。昔ながらのゼミは輪読という授業の
延長のような形態が主流で、ゼミ生数が多かったためにそのような指導法しか
できなかった事情もあります。また、ゼミでの飲み会や発表会・合宿・旅行と
いう点でも活発なゼミは少なかった印象です。ゼミのイベントは、必要以上に
手間がかかるので敬遠する先生も多かったのでしょう。こうした風潮が続いた
ために主体的な学びも進まなかったことは否めません。

教室で聞いているだけは学生の力はつきません。アクティブラーニングの効果
は、学生が互いに議論し教え合うことで、本当の力が身につくという点で注目
されています。とはいえ、この手法に対する理解が進んでいないのも現状です。
いまだに、大教室で外部講師を招聘して、普段では聞けない話を聞かせること
がよいことと思っている教員も少なくありません。聴衆を増やしたり、関心の
ある外部の人を集める目的で、公開授業とするのはいかがかと思います。本当
に学生のためになっているかは甚だ疑問です。

しかし、最近は積極的な活動のゼミが増えてきています。個々で頑張っている
学生もいるので、学修活動を学内へ見えるようにしたいと考えています。ゼミ
での発表会や研究サークルの活動などを応援し、またアクティブラーニングを
推進するために新た着手しました。例えば、主体的な学びとして経済学部では
卒業研究発表会があります。まちづくり提言コンペや名証株式投資コンテスト
も相当します。児島ゼミでは、サブゼミやゼミ内での発表会もあります。学情
センター4階のガラス張りのセミナールームは、学生たちの勉強に取り組む姿が
外からでもわかります。夜遅くまで自分たちで学習する習慣が常態化すれば、
他の学生らの姿勢も変わっていくかもしれません。ひいては本学に対する高い
評価につながる契機になることを期待しています。


────────────────≪  books ≫─
■本の紹介 > 『走ることについて語るときに僕の語ること』
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☆関連サイト:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163695808

村上春樹,文藝春秋・文春文庫,2007年10月

最近、走ることが趣味の一つになり、この本と出合いました。村上春樹氏の
作品では『ノルウェイの森』や『1Q84』といった有名どころは読んでいます。
ハルキストではないので、彼について詳しいわけでありません。有名人です
から彼がノーベル文学賞の最有力候補であること、英語が堪能であることは
知っていました。しかし、ランナーであることは知りませんでした。

この本では、自分の経歴について語っているので、まさに自叙伝です。なぜ
走り始めたか、ランニングがどれだけ辛いのか、それでもなぜ続けるのか、
走っている気持ちが作家の独特な表現で描かれているので、マラソンレース
に出た経験がある人には、大変興味深く読めると思います。また、練習量や
達成タイムを知っていれば、彼の練習量が半端ではないこともわかります。
サロマ湖100㎞やトライアスロンにも挑戦した身体レベルを考えると生半可な
態度ではなく、真摯にマラソンに向き合ってきたことが分かります。

超一流の作家で多忙を極めているであろう人がいかに毎日の練習時間を確保
しているのか、そのタイムマネジメントや練習方法などにも興味が湧きます。
同じような人に山中伸弥さんもいます。京都大学教授でiPS細胞では世界の
第一人者で、誰もが知っているノーベル医学・生理学賞を受賞した先生です。
京都マラソンでの完走タイムは、普通のオジサンが適当に走って達成できる
レベルではありません。少なくとも毎日1時間のトレーニングは必要となる
はずです。どこからそのような時間を捻出しているか大変興味がわきます。
彼は莫大な費用が必要なiPS細胞研究の支援のために、自身が走ることでPR
に努めています。

二人の有名人から得られる教訓は、マネジメント能力です。人間として必ず
平等に与えらているのは1日24時間です。どのように使うかは本人次第です。
辛いトレーニングをルーティン化したり、強い意志で臨んでいるのかもしれ
ません。大きな仕事を成し遂げている人達なので、彼らの姿勢に見習うべき
点は多いと思われます。

マラソンを趣味とする高校時代の陸上部の友人にこの作品を紹介しました。
ストイックさに感動したと言って、大変感謝されました。友人の感動は共有
できます。彼が「走ることができるのは、本当にありがたいこと」と呟いた
のも、病気に悩まされている患者と常に接しているか医師だからでしょう。
元気であること、さらに走ることができるという健常者にとっては当たり前
のことに喜びを見い出しているのです。年齢を重ねると身体の衰えをいかに
受け入れるかという問題に直面します。病気になってから健康のありがたみ
に気づく人も多いでしょう。

小生は社会経済を研究対象とする者として、100年ライフへと社会が変わる
時に、家族や他人へ迷惑をかけることなく、いかに健康で過ごすかに関心が
あります。マクロ的には増加し続ける国の医療費を削減するため、高齢者が
元気で社会参加をするためには、健康寿命を延ばすことが何より重要と考え
ます。人類史上初めて超高齢社会を迎える日本にあって、環境問題と同じく
ひとり一人が自ら考えて取り組まなければならない問題だと思っています。


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■最近のゼミから > 卒業研究発表会の段
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次年度のゼミ募集が始まり、今年も経済学部と商学部でゼミのポスターが
2階の展示されました。児島ゼミのデザインはほぼ毎年同じですが、内容は
少しずつ変えています。今年は、卒業生が働いている企業のリスト(一部
のみ)を付け加えました。その効果があったかどうかはわかりませんが、
ありがたいことに、2年生・3年生のどちらとも1次・2次併せて定員以上の
応募がありました。次年度も志望者のやる気に応える指導をします。

さて、いよいよ卒業研究発表会が始まります。学内審査会は3年ゼミのある
4時限目からスタートになります。児島ゼミからの出場予定者は6名となり、
発表日と教室は以下の通りです。なお、ここで発表できない人も11月23日
までにはビデオ撮影を終えるよう、皆で協力して進めてください。

 11月12日(月) 岩井(曙201)
 11月13日(火) 鈴木大(曙201)
 11月15日(木) 稲葉(曙202)・鈴木啓(曙201)
 11月17日(金) 山本(曙301)・花村(曙302)

今年度の卒論指導で特筆すべきは、かなり順調に進めているゼミ生がいる
ことです。前回のコジマガで紹介した作成ペースより速く進んでいます。
10月中に中身のあるストーリーや結論もほぼ完成したので、Wordに入って
よいという指示を出しました。この調子が続けば、年内終了できるゼミ生
が数名現れるのではないかと期待しています。

何より嬉しいのは、最初に提示したペース(決して無理なスケジュールを
示した訳ではありませんが)で走り続ければ、必ずできることを実証して
くれたことです。多くの4年生がのんびり構えているだけに、やり抜く力
(Grit)の重要性を改めて認識しました。

さて、2年ゼミと3年ゼミでは、名証株式投資コンテストが中心です。最近、
世界的に株式市場は低調なので、大幅なキャピタルロスが生じ面白くない
と感じる学生が多いように思われます。とはいえ、常に政治経済ニュース
をチェックする習慣がつき始めているようで学修成果が顕著に見られます。
これまでのやらされ感から主体的に活動するように変化すれば大成功かと
思います。今回の卒論でAIの株価予測を実際のデータから検証するという
興味深い研究テーマを進めている4年生がいます。ゼミの2・3年生に対して
株式の仕組みや名証株式投資コンテストについて解説をしてもらいました。
教員が説明するよりも学生らの食いつきがあるように感じます。

6年ほど前から名証株式投資コンテストをゼミで取り入れました。ようやく
アクティブラーニングとして効果的な運用方法ができるようになりました。
単なるマネーゲームでなく、金融リテラシーだけでなく企業の業績や社会
に向き合う姿勢などを考えさせることができるようになりました。経済学
とキャリア教育を結び付けた内容にもなっているように思います。


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■編□集□後□記□
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名古屋証券取引所の方がゼミに来られました。名証株式投資コンテストの
ご担当なので、ゼミ生に証券や企業について簡単なお話をもらいました。





■コジマガ・バックナンバー
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コジマガ第144号を2018年11月10日に発行しました。
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■NGU短信 > 「主体的な学び月間」の段
■本の紹介 > 『走ることについて語るときに僕の語ること』
■最近のゼミから > 卒業研究発表会の段


などです。