2014年3月21日金曜日

第105号(2014.03.21)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第105号
□───────────────────2014.03.21─
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.105
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


2013年度もあと10日です。新しい環境へ移行するOB/OGも多い時期ですので、
健康はに留意して、気持ちを新たに取り組んで下さい。さて、大学も次年度
から授業時間の確保がいっそう厳しくなります。また、これまで学位授与式
は3月15日前後でしたが、次年度は2015年3月21日(土)となり、一週間ほど
遅くなるそうです。時代の変化に対応できるだけの柔軟性が求められます。


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■NGU短信 > 学位記と授与式の段
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☆関連サイト:

3月14日(土)に卒業式が名古屋国際会議場にて行われました。正式名称
は学位記授与式で、すでに数年前から名称変更されています。学士課程を
修了した学部生と修士課程を修了した大学院生が参加します。所定の課程
教育を修了した者に学位を授与するという重要なイベントです。

一般的に学位取得には、決められた課程の要件をクリアすることが必要と
なります。多くは論文を課す場合があり、卒業論文・修士論文・博士論文
と呼ばれます。通常は、課程の最終年度に体裁を満たした論文を提出して、
査読者がこれをチェックし、学位授与に値するかを審査します。修士論文
や博士論文では指導教員の他、副査の教員つくパターンが多いようです。
研究内容に関する公開セミナーが必須であったり、口頭試問という試験を
する場合も少なくありません。もちろん不合格となることもあります。

審査や試験の評価には、査読者からの指摘箇所を加筆・修正することから
合格というケースもあります。研究機関によって対応は多少異なりますが、
以上の手続きを予備審査として、本審査へ進ませるという大学もあります。
教授会などで最終評価を決定し、ようやく学位が取得できます。こうした
面倒と思われる手順は、論文の水準を維持するために必要です。

すでにお気づきだと思いますが、ゼミでの卒論指導は一般的な学位論文に
従っています。まず、研究内容をプレゼンにまとめ、これをビデオに収録
します。卒業論文を執筆するのに内容が足りているかどうかを判断します。
次に論文の形式や体裁を整え、定められた期限までに提出します。その後、
ダメ出しを受けて、内容や体裁のクオリティを高めた結果、合格できると
いう手順になっています。すなわち、一般的な大学院での学位論文の作成
プロセスに倣っています。

大学卒業後、さらに大学院で研究したいという卒業生が増えていますので、
このような一般的なプロセスを体験することは有意義です。実際、本学の
大学院以外にも、働きながら早稲田大学大学院や名古屋工業大学大学院で
学び直すという高い志を持ったOBもいます。学位を取ることだけが、目的
になっては本末転倒ですが、アカデミックキャリアは国際的な仕事をする
上では重要です。こうした研鑽する機会から真の実力をつけてもらいたい
と願っています。自らを鍛え、自分の未知なる可能性を切り拓こうとする
姿勢が大事であることを卒業生からも学生に伝えてもらいたいと願います。


────────────────≪  books ≫─
■本の紹介 > イノベーション・オブ・ライフ
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☆関連サイト:http://books.shoeisha.co.jp/book/b101868.html

『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ
君たちへ』,クレイトン・クリステンセンほか,翔泳社

春休みには授業がありませんが、その代わりに自分の研究活動などで忙しく
なります。研究時間でいろいろな文献を読みます。専門的な論文だけでなく、
これまで積ん読してあった本にも目を通します。最近は電子書籍を購入して
おり、かさばらないので出張時にも持って出かけられて便利です。

さて、積ん読本のひとつが『イノベーション・オブ・ライフ』です。著者の
クリステンセン教授は「破壊的イノベーション」で世界的に有名な学者です。
ハーバード大学のビジネススクールの大学院生たちへの教育や研究から得た
助言が含まれています。学生たちに伝えたいことが本にまとめれています。
超一流のアカデミックキャリアを身につけた人すべてが成功するわけでなく、
中には、ふとしたきっかけで転落の人生を歩んでいる事実があります。なぜ
望んでいない結果になってしまったのか?高い理想や高潔な人生を歩みたい
と思っていた有能な人物であったのに・・・という疑問から生まれた本です。
ともすると啓発本かも知れませんが、内容は経営学に深く関わっています。

最初に思い描いた通りの人生にはならないけれども、努力を続けることから
思わぬ道が拓けてくる可能性がある。実は、それが自分の天職であるという
こともあり、これを「創発的プロセス」として理論に重ねあわせながら説明
しています。実体験の少ない20代では、内容がわかりづらいかもしれません。
しかし、年齢を重ねるほど、クリステンセン教授の理論に基づく説明に納得
できるはずです。そのためには、多くの挫折と少しの成功という経験が必要
でしょう。

ちなみに、「破壊的イノベーション」とはそれまでライバルを寄せつけない
圧倒的な企業も、厄介なイノベーションが登場すると正しい戦略をとっても
優位性を保つことができず、滅んでしまうという理論です。かなり端折った
説明ですので、クリステンセン氏の『イノベーションのジレンマ』を読むと
良いと思います。また、日本語訳版での正しい理解を促すために以下の本を
推薦します。中嶋航一先生の『千と千尋の経済学:資本主義の「化け物語」』
です。Amazonの電子書籍からしか購入(\400)できませんが。大変面白い本
ですので、一読を薦めます。


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■最近のゼミから > 経済学部卒業パーティとゼミ追コンの段
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☆関連サイト:http://www.anacrowneplaza-nagoya.jp/

卒業式の後、経済学部の卒業パーティが金山のANAクラウンプラザホテル
グランコートで開催されました。学部にとって初めてのホテル開催になり
ました。思い返せば、初のゼミ生を送り出した時は、卒業式後のパーティ
もありませんでした。2期生から学部で卒業パーティが開催され、3期生
はその幹事役を引き受けました。以来、学内のカフェテリアで、教授会の
主催するパーティが続いていました。他学部がホテルで開催し始めても、
経済学部は1学年450名と人数も多く、会場探しなどで躊躇していました。

名古屋へ移転した後も同じように実施していましたが、ようやく今年度は
ホテル開催となり、これで全学部がホテルでのパーティ形式になりました。
確かに学生や大学に経済的な負担が増えることになります。でも、やはり
人生の節目にはきちっとした行事も必要と考えます。さらに、社会人とも
なれば当然、社交場へ出る機会も多くなります。その際、最低限のマナー
や立ち振舞ができないのは、あまりにも大きな損失です。若いうちは所作
や身だしなみを覚える必要があります。ゼミの卒業生諸君には、華やかな
舞台で自らを磨いてもらいたいと願って止みません。

パーティでの抽選会では、黄金の右腕でゼミ生への当たりくじを引き当て
ました。その夜、金山でゼミの追い出しコンパが始まりました。3年生は
就職活動の真っ最中ですが、彼らが先輩である4年生をもてなす役割です。
追コンは数年ぶりの開催でしたが、ゼミの時間やサブゼミ・数度の飲み会
を経ているので、学年を超えてコミュニケーションがとれるような雰囲気
になっていました。上下の学年に接点を持たせる従来のやり方が、今でも
踏襲されています。相互に言葉や記念品を交わし、とても温かなコンパと
なったのは言うまでもありません。


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■編□集□後□記□
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自分にとって40代最後の春となりました。思い返せば、名古屋学院大学に
奉職して以来、20年が経過しようとしています。最初の10年はただ走って
きただけという感があり、自分では十分な成果がなかったように思います。
勤続表彰という制度が大学にありますが、10年目でこれを受けた時には、
正直恥ずかしい気持ちが強かったのを今でも覚えています。ゼミや授業の
教育面では、手を抜くことなく努力した自負はありましたが、それ以外の
仕事に対して忸怩たるものがあったのでしょう。論語の「三十而立」とは
ほど遠く、経済的に自立したものの、自らの仕事に満足できる状態であり
ませんでした。

それに比べて後半は本当に激動の10年間だったように感じます。厄年とも
重なり厳しい40代のスタートでした。その後、状況は一転し、少なからぬ
成果を得られたのも、多くの人のお陰です。そこには、さまざまな出会い
や別れがあり、幸運にも恵まれました。そして、ようやく自分のライフ・
ワークのひとつを見つけることができました。やはり孔子の「四十而不惑」
どころではなく迷ってばかりでしたが、面倒がらず動き見て聞いて体験し、
頭で考えた結果が実を結んだと思います。

さて、次の10年はどのようになるのでしょうか。論語では「五十而知天命」
ということですが、おそらく天命を知ることもないまま過ごしてしまうと
思います。ただ、これまで自分が頂いた御恩を次の世代へ送ることだけは
やらねばなりません。新年度から新らしい仕事が始まるだけに、これにも
新鮮な気持ちで取り組んでいきたいと思います。大きな目標を持ちながら
頑張れば、いつか「創発的プロセス」がやってくるはずです。


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