2005年2月6日日曜日

第09号(2005.02.06)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第9号
□───────────────────――2004.02.06─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.009
*等幅フォントでご覧ください。

昨秋10月に発行して以来、年末・新年が過ぎ、春節となってしまい
ました。そこで、今回は旧暦の新春号として発行します。

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■NGU短信 > 「創発」について考えるの段
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 前号でお知らせしたとおり、本学40周年記念事業として北川正恭氏
(前三重県知事)による特別講演会「次なる40年に向かって-新価値の
創造-」が国際会議場で開催されました。経済学部には政策学科があり
ますが、学科生全員に聴かせるべき内容でした。講演内容はいつも演者
が語っている主旨であるということなので、既にテレビや新聞などで知
っているかもしれません。以下で講演要旨を簡潔に報告します。

複雑系の「北京の蝶々」を喩えとして、小さな行動が全体を変える力を
持つことを力説した。320万人もの地方公務員の意識改革により地方の
行政が変わり、やがて国の行政・政治までも変える力となりうる。

時代の変化として情報化のもたらす影響は極めて大きい。例えば、情報
収集ならば若い人の方が優れているように、単なる経験では年功序列の
ような価値はない。現代は従来の価値観を破壊する激動の時代である。

グローバルな大競争時代にあって、変化に対応できない企業は市場から
退出を余儀なくされる。変化への対応力が重要であるが、現在の行政や
政治システムは適応ができていない分野である。

無責任な政治が無駄を創出し、700兆円もの莫大な赤字を国民に負わせて
しまったが、有権者にも責任の一端はある。しかし、最近では有権者に
対し厳しいマニュフェストを掲げても当選する時代になりつつあること
を見れば、時代は確かに変わりつつある。

「責任」を明確にし「経営」的発想で行政府を運営すれば、効率化でき
る。まず、直接民主主義制である地方政府から改革し、3000の地方行政
の小さな努力がやがて国を動かす力となるはずである。

以上、簡潔すぎて分かりにくい箇所もありますが、北川氏の改革派知事
時代のマニュフェストなど具体的な取組みも随所に紹介されていました。

さて、講演にも出てきた「複雑系」という学問について補足説明します。
これは情報科学分野から発展した学問です。映画「ジュラシックパーク」
で学者が登場し警告を唱えていますが、彼は「複雑系」専攻の数学者です。
現在は、様々な学問分野で応用されており、経済学では「経済物理学」と
して知られています。

北京で蝶の羽ばたきがうねりとなり、地球の反対側でハリケーンが起こる
という喩えは「バタフライ効果」といいますが、これは複雑系の本質では
ありません。これを取り違えて理解している学者も多いのですが、複雑系
での最も重要な概念は「創発」です。

創発とは全く未知なる新しい技術・制度などが従来のシステムに取り込ま
れるとき、予想しえない結果や成果が生まれることを示します。技術革新
やIT革命による新しい市場の創造はこれに相当します。今、経済理論が
行き詰まり、「創造的破壊」を提唱した経済学者シュンペーターが見直さ
れているのは、激動の時代と無縁ではありません。


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■ 最近のゼミから
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☆関連サイト:http://www.ngu.ac.jp/~kkojima/seminar/events.html

今年度は新年早々、1泊2日のゼミ旅行へ行きました。とはいえご存知
のように卒論作成の繁忙期で社会見学どころではないといった状況です。
今回は児島から提案し、行き先を知多半島にしました。

知多半島といえば、もうすぐ開港の中部国際空港「セントレア」かなと
と思われますが、いずれ皆行く場所でなのでパス。観光産業をテーマと
して、ミツカン本社の博物館「酢の里」を見学しました。また、3年生
はいよいよ就職活動なので、経済にとって「もの作り」がいかに大切で
あるか、地元産業の活躍を体験してほしいという意図を持っています。

この旅行の最大の目的は、4年生は卒論完成、3年生は卒論の元となる
原稿を書き上げることです。大学を通じて依頼したMKバスの車中でも
ダメ出しと効率的に時間を使いました。美浜町(話題の南セントレア市
ではありません・・・)にある野間大坊の近く紅葉屋に投宿しましたが、
学生の合宿には適当な旅館でした。ノートPCにプロジェクタを持参し
すべてがモバイルという便利な世の中です。これらを最大限に活用して
指導できたので、かなり成果が上がったのではという感想です。(また、
野間海水浴場まで約500mですから、夏の利用も面白そうです。)

翌朝も勉強の後、野間大坊へ初詣(キリスト教主義大学にもかかわらず)
源義朝公の御廟所へお参りしました。学生が知らないのに驚きましたが、
源頼朝の父で風呂場で平家に襲われ「せめて木刀一太刀さえあれば」と
いう話は有名です。(平家物語の早川先生が講義で扱ったそうですが)
今年のNHK大河ドラマは「義経」ですので、ある意味話題の場所への訪問
だったのではないでしょうか。

当初の予定は、日本キリスト教の原点を訪ねるはずでした。今回は断念
しましたが、日本の和訳聖書誕生の地は美浜町小野浦です。かねてより
話は知っていましたが、クリスチャンである英語の増田先生よりご紹介
いただき、三浦綾子の『海嶺』を映画化したビデオをチャペルで借りて
事前にチェックしました。

あらすじは、難破した小野浦の漁民らが北米で救助され、日本への帰国
を切望します。帰途のマカオで聖書の翻訳を手伝い完成後、モリソン号
で日本へ向かいます。鎖国下にある日本では外国船は打ち払われ、音吉
らの願いは叶わないという悲劇的な内容です。

主人公の音吉らは異国で生涯と閉じ、ようやくその遺骨が出身地小野浦
に返されることになった記事が昨秋の新聞に出ていました。彼らの翻訳
の功績を讃えた碑が美浜にあります。

豊浜漁港の「おさかな広場」を見学後、土産購入として「鯛ひろば」へ。
鯛祭りのビデオが上映されており、豊かな海と共生する地元を窺い知る
ことができました。OBの皆さんも、内海などへ海水浴に出かける際には
ちょっとしたテーマをもって足を伸ばしてみてはどうでしょうか?

【ご案内】
□卒業式&追い出しコンパ 3月15日


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■ 編□集□後□記□
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☆関連サイト:http://www.kojima-seminar.net/

さて、2005年いよいよゼミ10周年イベントが開催されます。すでに年末
のOB会で第1報が流されましたが、詳しくは、OB会サイトをご覧下さい。
愛・地球博の開催期間中でもあるので、遠方在住のOBもこの機会に是非、
変貌を遂げた名古屋を目に焼き付けておく機会にしてはどうでしょう。
大学周辺も道路整備が進み、名学坂を降りきった先には「せと品野IC」
が開通を心待ちにしています。

また、馬淵君(2期生)のご尽力により、ドメインを取得しました。
詳細は別途お知らせしますが、新しい展開をご期待下さい。