2010年12月18日土曜日

第67号(2010.12.18)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第67号
□───────────────────――2010.12.18─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.067
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


あと2週間あまりで年末です。読者の皆さんは忙しい毎日をお過ごしかと思い
ますが、風邪などひかぬようご自愛ください。今週、フロリダに記録的な寒波
が襲来し、地元のニュースなどで大騒ぎでした。しかし、日本での12月程度の
寒さでしたので、やはり温暖な気候であることは確かでしょう。

さて、すでにMLでご案内の通り、恒例のゼミOB忘年会が開催されます。今回は
アメリカでの研修につき不参加ですが、会場にフロリダ土産を届けてあります
ので、抽選などで獲得して下さい。

また、夏の飲み会の席でツイッターの話を出したところフォローが進みました。
単なるつぶやきですが、これによってOBや学生、世間の動向を知ることができ、
有効な情報源になっています。忘年会でも引き続き、皆でフォローアップの輪
を広げて下さるようお願いします。


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■アメリカ短信 > フロリダ高速鉄道の段
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☆関連サイト:http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/index.htm

Thanksgivingの休暇は、遊びに来ていた学生達とフロリダ半島の西側にある
タンパ方面まで出かけました。インターステイト4を使って、タンパまでは
片道およそ100マイル、2時間のドライブです。多くの車が時速70マイルほど
の高速走行をしています。片側4車線の道路に加えて、十分な車線幅がある
ので危ないと感じません。さらに、上下線の間にも拡幅用の敷地が確保され
ています。

さて、アメリカのオバマ政権は高速鉄道網を建設する計画を持っています。
確かにCO2などの環境問題を考えれば、高速鉄道へシフトするのは賢明な政策
です。また、新たな公共事業として、仕事を作り、雇用を確保するにも有効
でしょう。最初に着工予定の路線が、カリフォルニアなどと並んでフロリダ
(タンパ=オーランド)です。というのもインターステイト4の用地に線路
を敷く予定なので、用地確保がほとんど終わっているからだそうです。また、
オーランド=マイアミも早期着工区間に指定されています。

ご存じのようにアメリカには多くの日本車が走っています。近い将来、高速
道路の側道に線路が敷設され、日本の新幹線が走っているという光景を想像
するだけでワクワクします。最近、日本の存在感が影を潜めているだけに、
日本の誇る新幹線はアメリカへPRするのにひとつの有効策であると思います。
何としても実現してもらいたいと切望しますが、受注までににはいろいろな
課題があるようです。

まず、ドイツやフランスなどの欧州組は国家プロジェクトとして、アメリカ
に売り込みをかけてきます。元首クラスがトップセールを行うわけですが、
首都ワシントンでのロビイング活動が重要となります。その一方で、日本は
車両メーカが複数あり、ひとつにまとめづらいという不利な面があります。
(日経新聞の記事による)。また、価格面では中国が有利です。現在、米中
関係が良好でないので、中国の可能性は薄いと考えられます。ただ、日本に
とっての救いは、今回は新規路線なので、既存の路線に合わせる必要がない
ということです。線路・車両・運行をワンセットにして売り込むという戦略を
国家として考えなければなりません。

また、地元へのPRも重要です。テレビのニュースでは高速鉄道の動画として
ドイツ製の車両が使われており、鉄道を知らない地元住民はこれが高速鉄道
かと刷り込みされている状態です。それにはメディア各社に日本の新幹線の
紹介用ビデオを配付するなどして、広報に努めなければならないでしょう。

加えて、地元へのアプローチは雇用対策です。NASAは来年スペースシャトル
打ち上げを最後にこの計画を中止します。ケネディ宇宙センター関連施設に
勤務する工学博士たちは、次の仕事を心配している現状があります。すでに
単純労働者が解雇されたニュースも話題になりました。そこで、日本の戦略
として、フロリダに北米における高速鉄道の研究拠点を設置し、ある程度の
研究者を受け入れを表明すれば、国際競争でも勝負できそうです。現実には
難しい課題が山積でしょうが、かつて貿易摩擦問題に発展した自動車産業が
北米に工場を建設し、地元へ溶け込んでいった方策を振り返るべきでしょう。

併せて、日経新聞の記事で紹介されていたように、駅を中心とした街づくり
(駅ナカ)のノウハウも積極的に展開するべきでしょう。あれこれと考えて
いるうちに昨年度のゼミの卒論を思い出しました。

ところで、日本のアニメやフィギュアなどのサブカルチャーは世界の中でも
かなりの注目を集めています。これらに匹敵する鉄道マニアが形成してきた
鉄道文化は、世界の中でも十分通用するはずです。例えば、JR九州には松本
零士氏の描くような斬新的な車両が走っています。新幹線や次世代のリニア
を扱うJRだけでなく、地方の私鉄や地下鉄にも特徴的な車両や車窓風景があり
ます。これらを積極的にPRすれば、乗車を目当てとした外国人観光客を呼ぶ
こともできるようになるかも知れません。今でもアニメ好きの若者が日本に
来たがっている状況を考えれば、可能性は十分だと思います。さらに日本の
鉄道乗車旅とグルメ観光地を組み合わせれば、面白い企画商品が提供できる
はずです。

現在、築地の卸売り市場が外国人に人気があるのは、日本食が大変高く評価
されているという背景があります。アメリカでは、かつてフジテレビが放映
していた「料理の鉄人」が、こちらで「Iron Chef」としてリメークされて、
人気番組になっています。こちらで生活して、徐々にCool Japanが理解でき
るようになってきました。

環境に優しい鉄道が世界的に注目を集めています。日本が持つ優れた技術や
豊かな鉄道文化を世界に向けて発信するには、今が絶好の機会のように思え
てなりません。


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■UCFから
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☆関連サイト:http://conferenceusa.cstv.com/ot/c-usa-members.html

UCFはカレッジスポーツでConference USAに所属しています。ここに加盟して
いる12大学で、16種目のスポーツを競い合います。アメリカンフットボールは、
多くの試合数ができないので2地区に分かれます。EAST DIVISIONにはUCFを
はじめEast Carolina、Southern Miss、Marshall、UAB、Memphisの6校があり、
もう一つのWEST DIVISIONは、SMU、Tulsa、Houston、UTEP、Rice、Tulaneの
6校によって構成されています。(地図は関連サイトから確認下さい)

UCFの2010のシーズンは、新人のQBが素晴らしい活躍を見せて絶好調でした。
カンファレンスの公式ゲームでは7勝1敗という成績で、見事地区優勝をしました。
WESTの優勝チームは、テキサス州ダラスのSouthern Methodist Universityで、
この両校によってカンファレンスのチャンピオンシップを争います。もちろん、
この試合はテレビ中継(ニュースのタイトルは"Take on Mustang")されました
ので、自宅で観戦です。前半を10対0でUCFがリードで折り返し、後半は両校が
ひとつずつTDを決めて17対7で試合終了です。まさにナイスゲームでした。
この勝利からUCFは大晦日に行われるLiberty Bowlの出場権を獲得しました。
地元のニュースでもこれを大きく取り上げていました。カレッジフットボール
ランキングでも全米で25位以内に入りました。

さて、12月の3週目で、UCFでは秋セメスターが終了しました。すでに帰省した
学生も多く、キャンパスには学生がほとんどいません。大学は年始までお休み
モードになっています。ちょっと休みの開始が早すぎるようには思いますが、
これがアメリカなのでしょう。日本では「師走」はとかく忙しいイメージしか
ありません。やはり日本人は働き過ぎなのでしょうか?


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■編□集□後□記□
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A Merry Christmas!

キリスト教主義のNGUにとってクリスマスは大きなイベントのひとつです。毎年
クリスマス礼拝を実施しています。今年は、瀬戸キャンパスのチャペルにて、
12月25日(土)の午後6時15分からスタートします。折角の機会ですので、瀬戸の
厳かなチャペルでクリスマスの話を聞くのはいかがでしょうか。どうぞ暖かい
クリスマスをお過ごし下さい。

賀状を交換している方々には欠礼になってしまいます。そこで新たな試みとして、
新年にPDFの賀状をコジマガから送信してみます。

2010年12月1日水曜日

第66号(2010.12.01)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第66号
□───────────────────――2010.12.01─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.066
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


アメリカ研修中でも大学ではさまざまな行事が行われています。文部科学省GP
シンポジウムとして「大学教育の質保証に向けた1・2年次教育のあり方」が下記
の通り開催されます(11月20日付の中日新聞の広告にも開催案内が出ています。)
日比野学舎にまだ行ったことのないOB・OGにはとても良い機会であると思います。
地下鉄日比野駅のすぐ真上で、交通至便なことに加えて、マイルポストもここに
入居しています。是非、お立ち寄りください。

○日 時: 2010年12月4日(土)13:30~16:00
○場 所: 名古屋学院大学日比野学舎301教室
○対 象: 大学関係者、高等学校教師、一般


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■アメリカ短信 > 収穫祭と消費大国の段
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☆関連サイト:

米国のThanksgiving Day(収穫感謝祭)は11月第4木曜日で、国民の祝日です。
ほとんどの店がクローズするために、多くの人から単身生活を心配されました。
当日の昼食はバーガー・キングでしたが、さすがに店内は閑散としていました。
店長らしき男性とアルバイトが働いていましたが、彼らの態度から「どうして
自分たちが働かなきゃいけないの・・・」という感じが伝わってきました。

翌日の金曜日はBlack Fridayで早朝からの大バーゲンです。この日のセールの
様子がニュースで大きく取り上げられています。電化製品専門店ベストバイの
店頭にテントを張って過ごす人達のニュース映像が流れていました。早朝4時
からの開店というのは異常な感じですが、それでも人は並ぶようです。かなり
安く提供しているのでしょう。当日朝、近所にあるモールの横を通りましたが、
やはり車は満車でした。Thanksgiving Dayの閑散とした状況とは対照的です。

この週は木曜日から4連休になるところが多く、世間は完全に連休モードです。
研究所でも週初めから何人かが休みを取り始めたようで、閑散とした雰囲気に
なっていました。また、グローサリーへ出かけても七面鳥はじめパーティ関連
の食材などが多く並んでいます。日本で見られる年末のスーパーマーケットの
ようです。確かに1ヶ月前から同僚の数人に「Thanksgivingは家でパーティを
するから遊びに来ないか」という嬉しいお誘いを受けていました。家族や友人
が集まって七面鳥でお祝いをするに違いありません。

さてThanksgivingの週末からは一転してクリスマスモードになります。ラジオ
から流れてくる音楽はほとんどクリスマス関連の曲ばかりです。しかし、まだ
半袖服で過ごせる陽気なだけに、かなり季節に違和感を覚えます。

さらに消費者向けの大バーゲン・イベントは続きます。翌週の月曜日はCyber
Mondayといって、ネット上でのセールが行われます。これが終わるといよいよ
クリスマス商戦の開始です。日本のクリスマスは12月頃とスタートは曖昧です
が、この国では感謝祭できちんと切り替わり、とてもメリハリがあります。

日本でもGDPの約6割を個人消費が占めるだけに、消費大国アメリカでの年末は
経済にとって最も重要な季節となります。これだけのセールですから実物経済
を牽引する大きな力となります。

この季節に最も消費される食材は、何といっても七面鳥です。私もこの季節に
3度ほど食しました。大統領のターキーパードンがあるように、多くの七面鳥
が犠牲になります。このニュースを見て『ブラック・スワン』にある「七面鳥
の悲劇」という言葉を思い出しました。それまで食事を与えられ、幸せだった
七面鳥はクリスマスを迎えると自らが人間の食事と化してしまうという哀れな
内容です。すなわち、当然のごとく続くと思われていた平和な日常が、突如、
不幸のどん底へ落ちてしまう喩え話です。米国の金融経済での悲劇、リーマン
ショックを喩えた表現だったように記憶しています。


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■UCFから
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☆関連サイト:http://www.youtube.com/watch?v=Z4uD4GDUu1k

先週、前号(コジマガ第65号)で紹介したUCFの観光学部(Rosen College of
Hospitality Management)を見学する機会に恵まれましたので、報告します。

Rosenスクールはコンベンションセンターの近くにあり、豪華なRosen Shigle
Creekホテルの北側に位置します。ホテルの敷地にあるゴルフ場がキャンパスに
隣接しているので、とても良いロケーションです。日本人の先生に出迎えられ、
まずはキャンパス内の学生寮から見学しました。寮の受付のお嬢さんに案内して
もらうことができ、その動画はYouTubeにアップされています。学生用の綺麗な
部屋はひとり一部屋、ハウスキーピングに電気光熱・インターネット代込みで
お値打ちな料金です。さらにプールまでも併設です。

次に、建物を案内してもらいました。2階の廊下はホテルと同じように絨毯が
敷いてあり、絵画がかかっています。本来ならば州の建築基準に不適合ですが、
州立大学への寄付ということもあって寄付者が認めさせてしまったそうです。
教室にはIT関連の設備が用意されていますが、それらは目立たないよう組み込
んであります。日本の教卓には無骨なOHCが置いてありますが、それとは違い
天井に高性能カメラが埋め込んであるのには驚きました。

さらに実習室へ行きました。ワインセラー、バーカウンター、2種類の調理場
(アメリカ式とヨーロッパ式)、宴会場などの施設があります。ここで実践的
教育が行われています。確かに調理もしますが、料理学校とは全く違った観点
で、料理が完成するまでの過程や原価計算などを学ぶ場です。また、宴会場の
設営では、顧客へ提供するサービスに対して、利潤を最大にするためのコスト
計算を行います。このように実際の現場をよく知り、現場で働く人達とうまく
コミュニケーションができる能力はマネージャとして必要です。

いずれの施設にも驚かされましたが、そこからどのような学生を育てたいかが
はっきりと判ります。すなわち、学部の目的はホスピタリティ経営という学問
を通じて、すぐに現場で使える人材の育成することです。卒業者の85%が大学
を出てからすぐにレストランやホテル・レジャー関連産業へ就職するそうです。
日本の多くの大学は就職内定率を90%程度と発表していますが、このデータは
就職希望者を分母とした数字なので、実質は卒業生の70%程度しか就職できて
いないはずです。

Rosenスクールでは「大学の顧客は企業であり、学生は商品である」という考え
を実践しています。関連企業が求める学生への要求項目を学部カリキュラムに
取り入れて、企業ニーズに対応した人材育成に努力をしています。そのために
教員自らも変化を受け入れなければなりません。今回の見学で「大学にとって
のお客さんは学生」という日本の大学の誤った考え方を正してもらいました。

なお、見学写真はブログに掲載しています。


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■編□集□後□記□
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先月の初めと終わりには、オーランドまで遊びに来てくれた人達がいました。
いつもは静かなアパートメントですが、しばし賑やかな時間を過ごすことが
できました。

気づけばもう12月です。今年も残すところ1ヶ月ですが、読者の皆さんには
健康に留意しながら、忙しい時期を楽しんでいただきたいと思います。私は
フロリダに来て、3ヶ月が経過しました。不器用なだけに思うような成果を
出すまでには至りませんが、コツコツと続けることで何らかの成果を掴んで
帰国したいと思っています。