2017年3月11日土曜日

第132号(2017.03.11)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第132号
□───────────────────2017.03.11─
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.132
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。

今年度の学位授与式(卒業式)は3月21日(火)です。年末から卒論完成
まで、多くの時間を共有した4年生との再会を楽しみにしています。

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■NGU短信 > 豊明花卉での市場見学の段
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☆関連サイト:http://www.toyoake.or.jp

2月20日(月)にゼミ2期生の久野くんが勤務している豊明花卉(き)を
訪問しました。ゼミ1期生の梅村くんとともに見学させてもらい、朝早く
から花の市場取引を目にすることができました。昔のゼミでは、年1回程
の社会見学を実施していましたが、ここ数年はできずじまいです。どこか
至便な場所はないかと(中央卸売市場は大学の周辺にありますが・・・)
思っていました。豊明花卉は名鉄豊明駅の目の前にあり、交通至便です。
国道23号と1号線に囲まれ伊勢湾岸道豊明ICの横にあり、物流面で優位性
が高い場所です。

普段、観賞用の花の流通や市場価格を気にかけることは、関係者以外で
はないと思います。お花屋さんが直接、農家で買うと思っているゼミ生
もいました。また、教室での学びでなく、アクティブラーニングとして
地元の企業や業界を訪ねる機会も重要です。さらに、キャリア学習でも
関連する業界がいかに広いかという知識も必要です。もちろん、経済学
の中心テーマである市場の見学は、教室での学びと繋げる意味で貴重な
体験となります。

価格決定は経済学の市場メカニズムの肝です。実際の市場では、いかに
値段が決まるかが目に見えます。消費者に販売する買付業者(買い手)が
朝から市場に集まって、複数のレーンから流れてくる花々を品定めします。
通常のオークションでは最高価格で入札した人が購入します。これは一般
的な「せり上げ方式」(イングランド方式)です。しかし、大量の取引が
あり、時間が十分にかけれられない場合、「せり下げ」方式を採用します。
この方式はオランダ式のダッチオークションと呼ばれ、豊明花卉ではせり
下げによるオークション取引が見られます。

例えば、高価な胡蝶蘭が取引レーン流れてくると、20000円からスタート
し、瞬く間に価格が下がっていきます。1000円単位で下がるので見学者は
大きな下がりように少し面食らいます。きっと売り手と買い手には大体の
市場価格(均衡点)の範囲を知っているので、こうした動きになると思い
ます。花屋さんは希望価格でボタンで落札します。しかし、もっと下がる
まで待ち過ぎると他人に買われてしまいます。理論的には、誰からも入札
がなければ、価格が下がり続けて原価割れになってしまいます。現実には、
ある程度の下限価格で、市場の方が取引をストップします。限られた市場
参加者での長期的な取引なので、原価割れするような価格で無理に取引を
成立させる必要はありません。無理をすると、売り手はその市場へ出品を
避けるようになってしまいます。

理論的な話題は『オークションの人間行動学』(日経BP社)を参照して
ください。この本にも、オランダの花市場の事例が出ています。最近は、
ネットオークションが盛んなので、こうした研究も進んでいます。

現場の見学後、花業界に関する説明をしてもらいました。市場の参加者は、
550程の買い付け業者(花屋さん)とその10倍の販売者(農家)とのこと。
取引のピークは5月の母の日直前で、見学日の取引はピーク時の1/4程度だ
そうです。寒い2月や暑い8月は取引が少ないそうです。農作物と同様に花
は長期保管ができず、質やサイズとも全く同じ商品はありません。また、
生活必需品でなく奢侈財という性質もあります。すなわち、買い手は余裕
のあるときでないと購入しません。

説明を受けながら、花の市場で面白い研究テーマが見つかると感じました。
例えば、消費者が花を選ぶようになる方策は?消費大国のロシアや香港で
考える、といったテーマです。また、日本人がどのような機会や場所で花
を購入するか?花をもらった時の効用水準に関するアンケート調査もあり
でしょう。さらに、今後のICTでの取引(ネットやICタグでの管理、需要
予測、AIでの価格設定)はどのようになるか?といったテーマは市場関係
者から直接、話を聞くことができるので、中身の濃い研究ができるように
思います。

日本には、古来、生花や供花といった花を愛でる文化があります。しかし、
消費経済が最優先されたことで、花も商品としてしか考えられなくなった
のかも知れません。GDPでなく幸せを基準に経済活動を測るのであれば、
花の取引量は大きく寄与するすることになるでしょう。


────────────────≪  books ≫─
■本の紹介 > やり抜く力
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☆関連サイト:http://www.diamond.co.jp/book/9784478064801.html

『やり抜く力 GRIT』(2016年)
アンジェラ・ダックワース 、ダイヤモンド社

前号に引き続き、最近の話題となっている本を紹介します。本屋さんで
平積みになっているので、知っている方も多いと思います。本の主張は
「成功するのは、IQや才能ではなく、やり抜く力」です。これと反対の
視点で書いているのが、橘玲氏の『言ってはいけない』(新潮新書)と
思います。こちらもベストセラー本ですが、読んでも内容が腑に落ちず、
途中で読むのをやめました。

「やり抜く力」は「情熱」と「粘り強さ」の2つの要素でできていると
主張してします。児島ゼミのテーマが「好奇心と情熱」なので、親近感
を覚えます。ゼミとしては『やり抜く力』の主張を支持します。最近は
主にKindleで読書しており、気になった箇所はKindleのハイライト機能
を使っています。ハイライトした一部を以下に紹介します。

・大変なことをするには、「ルーティン」にまさる手段はない
・赤ちゃんや幼児は、失敗から学ぶことが苦にならない
・天職との出会いは、完成したものを見つけることではありません。
 受け身の姿勢ではなく、自分から積極的に行動することが大事
・大学生でも楽観的な学生のほうが、成績がよく中退率が低かった
・どの調査においても「成長思考」と「やり抜く力」は比例する
・「成長思考」でいると、逆境を楽観的に受けとめられるようになり、
 そのおかげで粘り強くなれる。

また、本の後半には「やり抜く力」を鍛えるくだりもあります。鍛錬法
にはグリットの高い集団に身を置くという提案があります。まとまりを
維持発展させるにはスローガンも必要であるそうです。児島ゼミの理想
は、一生涯に渡って志を高く持ち続ける集団です。「好奇心と情熱」を
積極的に使っていくべきかとも思いました。

なお、この本はTEDでの6分間のプレゼン後に書かれたそうです。興味
のある方は、まずネットでTEDをご覧ください。著者の風貌や話し方
が伝わりますので、読みやすくなるかもしれません。


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■最近のゼミから > ゼミでの「やり抜く力」の段
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私事で恐縮ですが、昨秋の10月から早朝のジョギングを始めています。
ちょうど4年生が卒論に着手した時期です。卒論作成は、ルーティンの
作業にしたり、皆で取り組むことから辛い時期を乗り切るように指導
していました。彼らに言うだけでなく、自分でも新たに困難なことを
やってみると説得力は増すかもと思いたちました。

昔、ジョギングで膝を痛めた経験があり、正直、続ける自信はゼロ。
朝の寒さが厳しくなるだけに諦めるのは時間の問題と思っていました。
そこで、自分の弱さを克服するための対策をとりました。周囲の人に
宣言する、スマホアプリの活用で成果を目に見えるようにする、無理
をしないでしんどい時は歩く、雨や体調不良の日は走らない、生活の
ルーティンなので必要以上に努力をしない、などです。

お陰で、体を痛めることもなく、5ヶ月以上週3日以上のペースで継続
できています。また、目に見える成果(筋力・スピードなど)がでて
います。毎日30分程度ですが、続けることの重要性に改めて気づいた
次第です。前号の『LIFE SHIFT』での主張する100年ライフを健康に
生き抜くために、また、不健康から周りに迷惑をかけなることのない
よう、自分の体調管理を目標にしておきたいと思います。


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■編□集□後□記□
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☆関連サイト:http://kojimag.blogspot.jp/2011/03/7320110330.html

ちょうど6年前に東日本大震災がありました。その時、アメリカ留学
でしたが、第一報を聞いた時のショックは、今でもはっきりと脳裏
に焼き付いています。当時のコジマガ(ブログ)を読み返すと自分が
どのように考えていたかを再認識できます。


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