2012年3月27日火曜日

第89号(2012.03.27)


□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第89号
□───────────────────2012.03.27─
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.089
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


3月15日(木)の卒業式で1000名以上の学部生が卒業し、本学のOB・OGは
累計4万人を超えました。1964年に創立して以来、これだけ多くの人材を
輩出しているわけですから、いろいろな場面で見知らぬ卒業生と出会う
ことも増えてくるはずです。書類に職業欄を記入する時があると、大学
の卒業生が担当だったりすることもあります。(このような場合、大変
照れくさいのですが、仕方がありません。)これもひとつの縁だけに、
たまに大学時代を振り返ってもらえると幸いです。


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■NGU短信 > 秋学期入学喧々諤々の段
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☆関連サイト:http://blog.ngu.ac.jp/president/2012/03/06/

東京大学の提案によって、秋入学の議論が盛んです。それまで当たり前
と思っていたことを再考するには、興味深いネタではないかと思います。
関連サイトでは、木船学長がブログで私見を述べていますし、こうした
議論はとても歓迎します。

さて、アメリカの大学に卒業式はありますが入学式はありません。UCF
での研修中、同僚に「なぜ入学式はないのか?」と尋ねたところ一笑に
付されてしまいました。同僚の説明では、多様な学生がさまざまな入学
方式で入ってくるので、入学時期は必ずしも同じでないとのこと。また、
完全セメスターですし、一緒に入学しても卒業時期は同じでありません。
そもそも入学後は厳しい勉強が待っていますから、いくつかのステップ
を乗り越えなければならず、最終段階をクリアできたことが卒業であり、
褒め称えられるべき行事なのでしょう。

上のような事情から、アメリカでは入学式よりも卒業式の意味があると
思います。日本では難関の入学試験をくぐり抜けたお祝いと、これから
新しい生活をスタートするケジメとしての入学式なのでしょう。しかし、
かつて受験戦争や受験地獄といわれた時代は過ぎ去り、進学率は50%を
超えて比較的容易に大学に入れるようになりました。推薦で高校・大学
に入った学生は入学試験を経験することもありません。

時代は変わりました。バブル期の「受験戦争、就活楽勝」から現在では
「受験楽勝、就活地獄」へと変容しています。これに合わせて年中行事
も活動期間が移行しています。かつて、大学受験はセンター試験、私大、
国公立という年明けが中心でした。最近では秋頃の推薦試験を利用する
受験生が増えています。入学選抜方法は従来の指定校の他にAO・社会人・
留学生など枠はどんどん広がっています。さらに受験科目も複雑になり、
高校で進路指導を担当する先生はさぞや大変なことと推察します。

大学の入口だけでなく、出口でも変化は見られます。20年前では4年生
の連休頃から就職活動に入って、夏休み頃には多くの学生が内定を得て
いました。公務員試験の時期は現在とあまり変わりありません。バブル
崩壊・金融危機・リーマンショックを経てゆくうちに、新規採用が抑制
され、新卒入社は極めて狭き門になってきました。また依然として新卒
採用は、春一括が主流なので、これに乗り送れまいと学生は就活準備を
かなり早めています。今や3年生の秋頃スタートですので、昔より半年
以上前倒しになっています。

こうした大学を取り巻く環境の変化によって、国際化や基礎学力の低下
という問題も顕在化しています。また、18歳人口の減少も誰もが知って
いることですが、抜本的な改革をしようという主体が現れませんでした。
というのも、構造改革なのでひとつの組織だけで動かせる問題ではない
からです。しかし、今回は頂点である東大の提案だけに、実現可能性が
出てきました。

秋学期入学で問題が解決するわけでもありませんが、現行の制度と現実
がこれほどまでにフィットしなくなっているので、変えるチャンスだと
思います。東大はじめ世界と競争するトップ校の役割、地域に根ざした
地方大学の役割、私学の教育理念に基づいた人材育成、これらを真剣に
考える良い機会であると思います。21世紀はすでに10年以上も経過した
にもかかわらず、ほとんどの大学が同じような方向へと進んでいるよう
に感じます。

さて、国際化のひとつの問題に日本人の英語力があります。この問題で
畏友がネットでつぶやいていたことを思い出しました。トップ校の入試
科目の英語はTOEFLにしたらどうかというものです。すると英文解釈から
将来の留学に向けた実用英語へシフトします。高得点者はそのスコアで
アメリカの大学院へ進学できる道も拓けるので一石二鳥です。こうして
学生は仕事に役立つ英語の勉強となるでしょうし、センター試験で実施
しているリスニングも不要になります。経済・経営系の学部ならばTOEIC
でも良いかも知れません。このように実績ある検定をアウトソースする
のも一考に値するでしょう。


────────────────≪  books ≫─
■ 本の紹介
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☆関連サイト:http://www.shinchosha.co.jp/book/113303/

『雄気堂々』,城山三郎,新潮文庫,1976年
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前回に続いて城山三郎氏の作品を取り上げます。今回の主人公は近代の
日本経済の基礎を築き上げた経済人渋澤栄一です。経済学部生でその名
を知らない学生がいたら、モグリでしょう。よく知られている彼の業績
としては、第一国立銀行(現、みずほ銀行の前身)や東京株式取引所(
東京証券取引所の前身)の創設です。最近、新聞で読みましたが、中国
で渋澤栄一が高く評価されているようです。

この本は上下巻の2分冊になっていますが、上巻は幕末期だけで殆どの
紙面が割かれています。読書中は、なかなか話が進展しないと苛立ちを
覚えるほどでしたが、読後はなぜ紙幅を充てる必要があったのかが理解
できました。まさに大激動の日本にあって血気盛んな若者がどのような
考えから自分で行動を起こし、その後の境遇につながるのか、こうした
結果が渋沢青年の糧となっているかを書かねば、晩年の渋澤栄一を描く
ことはできないからです。

田舎の農民が自分の意志で行動し、周りに彼の才能を見い出してもらい
ます。血気盛んな若者の行動から危なっかしい場面でも、人の持つ運が
人生を左右します。勤王倒幕運動に加担するも、巡り巡って水戸一橋家
に仕える身となりました。一橋家で才覚を表すも、主君の慶喜が幕府の
将軍職につきます。その後、フランス留学の随行員という命を受けて、
深く西洋文明を知ることになります。その後の明治維新では、持ち前の
性格に西洋知識が重宝され、新政府からも期待されます。

名古屋中村の農民の秀吉が天下人になったことは、広く知られています。
渋澤栄一の生き様にも同じような立身出世物語があります。政治でなく
経済での功績が多い人だけに、経済学部卒業生には一押しの小説です。
また、苦労人故にその功績や思想がもっと広く知られるべきであるよう
に思います。特に、閉塞感がある現在の経済にあっては、振り返られる
べき人物の一人でしょう。


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■最近のゼミ・講義から
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☆関連サイト:http://www2.ngu.ac.jp/~kkojima/seminar/menbers.html

新学期が目前です。新たに3年ゼミ(18期生)へ21名を迎えますが、これ
までの経験があるので、あまり不安はありません。ただ、ひとつ気になる
ことは恒例の新歓コンパです。現在は4年生がいないので、どうしたもの
かと少し困っています。普段ならば連休前に実施するところですが、ゼミ
が始まらないと様子が掴めません。今年の開講曜日は木曜日なので、連休
明けの10日か17日の夜にでも開こうと思っています。OB・OG諸氏の積極的
なヘルプを求めています。


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■編□集□後□記□
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先日、調査で東大阪市と島根県隠岐郡海士町を訪問しました。毎年のこと
ですが、地方で頑張っている方々のお話を伺うと素晴らしさに感動します。
さらに彼らから本当にパワーをもらうことができます。他の人は諦めたり
現状を嘆いたりするところを、困難に立ち向かい未来を切り拓く姿勢には
頭が下がります。すると、自分の仕事がちっぽけであり、自分が相対する
困難などは吹けば飛ぶようなつまらぬものと思えてきます。

十分な元気をもらいましたので、来年度も頑張りましょう。


■コジマガ・バックナンバー
☆ブログ: http://kojimag.blogspot.com/
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2012年2月4日土曜日

第88号(2012.02.04)


□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第88号
□───────────────────2012.02.04─
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.088
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


大寒波とともに2月がやってきました。名古屋でも15センチの積雪と2年
ぶりの雪景色に日本の冬を感じます。急激な冷え込みに足元も凍結して
おり、思いがけぬ転倒のおまけ付きです。幸い無事でしたが、皆さまも
気をつけてお過ごしください。全国的にインフルエンザも流行中なので
日々、油断大敵です。


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■NGU短信 > 地下鉄広告の段
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☆関連サイト:http://www.ngu.jp/news/list02.html

年末の地下鉄で、本学の広告をよく見たという方も多かったのではない
でしょうか。かつては全く宣伝に関心のない大学でしたが、この数年は
積極的に広報をするようになってきました。たしかに全国に700以上もの
大学があるので、どこかで目につかないと忘れ去られてしまいます。

まず、研究・教育などの成果で知られることが第一でしょう。これらは
大学の本分ですから、継続した努力が求められます。次に大学関係者の
活躍が記事となることも重要です。在学生や卒業生の活躍は本人の努力
が認められた結果ですが、同じ所属の(だった)人たちの話題ともなり、
プラスの影響があると思います。スポーツ選手たちの活躍は、対外的な
広報に加えて、関係者にとっても明るい話題となります。

そして一般広告です。この効果はすぐに数字に表れるものでもないので、
その評価はさまざまです。おそらく広告によって入学志願者数の増加を
期待するのでしょうが、それ以外の効用もあると考えます。特に、OBや
関係者が広告を目にすれば、大学の存在を再認識する効果があります。

かつて競合大学が積極的に宣伝をしていた頃、ゼミの卒業生から「なぜ
本学は広報をしていないのか?卒業生として淋しい」という嘆きに近い
言葉をもらいました。これは、いまでも強烈な記憶として残っています。
このようなメディアを使った広報には賛否両論があります。個人的意見
としては、資金を投じるのであれば目立つぐらいのインパクトある広報
が必要と思います。(もちろん、品がないようでは困りますが・・・)

その他、最近は学内で頑張っている取り組みが新聞に掲載されることが
増えてきました。優れた取組みが数多あったにもかかわらず、これまで
低い評価でしかないことに疑問を感じていました。表面的でなく、実態
を伴った宣伝を継続してゆけば、対外評価も高まってくると期待します。
最終的に大学のブランドを確立できれば、卒業生はじめ関係者がもっと
自信やプライドを持って行動できるのではないでしょうか。


────────────────≪  books ≫─
■ 本の紹介
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☆関連サイト:http://www.shinchosha.co.jp/book/113315/

『男子の本懐』,城山三郎,新潮文庫
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最近は作家城山三郎に興味を持っています。彼の作品をコジマガで
取り上げるのは、02号の『気張る男』、38号の『粗にして野だが卑
ではない』に続いて三回目です。氏の経歴や作風を知れば知るだけ、
共通点が見えてくるので、親近感がいっそう湧いてきます。

地元名古屋出身である城山三郎氏は、日本を代表する経済作家です。
繁華街の錦三丁目で商売屋の子供として生まれ、名古屋商業へ進学、
17歳で志願兵となるも悲惨な現実を目の当たりにします。終戦後は
一橋大学に進学し、経済学を学びます。また、キリスト教の洗礼を
受けます。卒業後は、愛知教育大学(旧:愛知学芸大学)の教官と
なり、経済学を教えていたそうです。この時代には、金城学院でも
教鞭を取ります。本気で作家を志していた頃、千種区城山町へ3月
に引っ越したことから「城山三郎」というペンネームを使い始めた
そうです。

本格的な執筆活動に至るまでの経緯を見ても、名古屋のキリスト教
主義大学で経済学を専攻する学生は、氏の作品をひとつでも知って
おくべきではないかと思います。氏の主人公は、激動の時代に翻弄
されながらも、実際の体験から自己を研鑽した気骨ある人物を描き
ます。それは氏の自らの体験と重なる部分が多いからでしょう。

さて『男子の本懐』です。これは日本の近代史で学習する金解禁を
実施した首相の浜口雄幸と蔵相の井上準之助が主人公です。昭和の
初めは第一次世界大戦後の混沌とした時代であり、世界の政治経済
の激動にあって日本がいかに舵を取るかを試されていたように思い
ます。作者が描く当時の日本の状況は、なぜか現代の政治経済にも
通じるように感じました。実直な濱口首相は財政の健全化を目指し
緊縮財政を実施します。それを担当する相棒が井上準之助です。

井上準之助は二度にわたり日本銀行総裁を務めた人で、浜口内閣で
大蔵大臣に抜擢されます。財政立て直しと金解禁を実現するという
二人の信念の物語です。経済学で学ぶように緊縮財政は景気を冷え
込ませるので、民衆にも評判はよろしくなく、軍事予算のカットは
軍部から疎ましく思われます。その結果、二人は暴漢に襲われて、
非業の最期を遂げます。まさしく命がけの仕事でした。消費税増税
議論を聞きながら読むのには、お薦めの一冊です。

また、城山三郎氏の『ゴルフの時間』を読みました。氏はあまりの
ワーカホリックぶりで身体が寝ることを忘れてしまい、病を患って
しまいました。医師から健康のために軽い運動を勧められ、そこで
ゴルフを始めたそうです。今回の主人公の一人である井上準之助は、
日本人による日本のゴルフ場を初めて開場させた人です。日銀時代
に井上はアメリカへ左遷させられて、その時にゴルフを覚えたそう
です。『男子の本懐』にも数ヶ所にゴルフの記述が出ています。

いまだゴルフに対する偏見が強い日本ですが、オリンピック競技に
なり、アメリカではごく普通のスポーツです。昨年、オバマ大統領
がビンラディンの暗殺を指示し、実行中にはゴルフをしていたそう
です。もちろん計画が事前に漏れないようにカモフラージュさせた
行動ですが、なんともアメリカらしいエピソードです。


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■最近のゼミ・講義から
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☆関連サイト:http://www.facebook.com/kojimaseminar.net

1月21日(土)に東京出張の機会があり、その晩に東京近辺在住の
OBを中心とした飲み会となりました。恒例の忘年会の折、新年会
をやろうかと盛り上がり、そのままの勢いで初のイベント開催と
なりました。

当日はあいにくの冬の雨で足元が悪い状況でしたが、新宿で顔を
揃えたメンバーとの飲み会は大変心温るものでした。お陰で明日
へのエネルギーをチャージできました。小生を除いても参加者の
平均年齢は35歳を超え、大人の飲み会です。

近頃は年数回は上京する機会がありますので、このような飲み会
を無理なく、楽しく続けられれば幸いです。少なくないゼミOBが
首都圏で頑張って仕事をしていますので、会を重ねるごとに人の
輪が広げられれば、いっそう楽しくなることでしょう。facebook
やTwitterなどもあるので、これらの連絡手段を使うのも便利です。

とりわけ、幹事の岩月くんにはいろいろとお世話をかけましたが、
参加者皆さんのお陰で楽しいひとときを過ごすことができました。
一人ひとりの心遣いに感謝します。また、お目にかかりましょう。


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■編□集□後□記□
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先月のセンター試験は「往生こいた」というのが正直な感想です。
名古屋弁で表現したくなるような状況で、何とか事無きを得たと
いう状態です。55万人が同一日時に一斉受験するという離れ業を
実施できるのは、日本社会のスゴさを感じます。だたし、無事が
当たり前となっているだけにトラブルに巻き込まれた受験生には、
同情を覚えます。

報道されているように、混乱の主な原因は試験方法を変更させた
ことでしょう。初日1時限目には写真シールの配布があり、かつ
社会は配付用紙の種類(パターン)が多いだけに、作業が煩雑に
なります。配布準備に割り当てられる時間は例年通りであるにも
関わらず、携帯電話に関する指示まで加わりました。これは昨春
起こった携帯電話によるカンニング事件への対応です。こうした
状況で、監督者のマニュアル通りでは時間が足りません。

センター試験1日目が終了した夜、ニュースで各会場での混乱が
報道されました。それに対して大学入試センターは「混乱の原因
は監督者の不慣れ」とのコメントを発表しました。その後、事実
が次第に明らかになるに従って発言が変わり、最期には受験生へ
謝罪に至りました。この対応のまずさにはただ呆れるばかりです。

組織の危機管理と対応の甘さの例として、よく見られる一例です。
故城山三郎氏であれば、どのようなコメントをするのだろうかと
考えてしまいました。


■コジマガ・バックナンバー
☆ブログ: http://kojimag.blogspot.com/
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2012年1月2日月曜日

第87号(2012.01.02)


□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第87号
□───────────────────——2012.01.02─——
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.087
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


あけましておめでとうございます。今年は辰年だけに、年男となります。
今や2回り以上も干支が下の学生を教えていることを考えると、自分が
重ねた歳月に驚いてしまいます。また、2011年の忘年会で、OBの年齢を
尋ねるとビックリすること数多です。彼らを教えていた頃の自分の年齢
よりもはるか上になっています。

さて、忘年会には20名近い参加者があり、いつもの店で楽しいひと時を
過ごすことができました。酒の勢いも手伝って児島ゼミゴルフ部が開設
されたり、1月には東京での飲み会(児島ゼミ関東攻め)が企画される
など、新たな展開にワクワクします。また、今春にはゼミが3年ぶりに
再開します。こうした期待感を表現する「情熱と好奇心」を今年もゼミ
のテーマとして頑張っていきたいと思います。


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■NGU短信 > ゼミ対抗コア6コンペの段
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☆関連サイト:http://www.ngu.jp/gp/

コジマガ60号で紹介したように、2010年4月より経済学部としてコア6
が始まりました。年度末をもってようやく全てのテーマが出揃います。
3年生になるまで20ヶ月分の例題(1200題)を解き、その豊富な解説
で学習し、経済学士の基礎を構築するということを目的としています。
詳細は、関連サイトを参照ください。

今回は、前号で紹介した経済学部のイベント「ゼミ対抗コア6コンペ」
の報告です。昨年12月15日から1週間にわたり経済学部2年次ゼミで
コンペが実施されました。試験の準備を含めて、ゼミの授業時間の内、
約15分を使ったイベントです。

まず、コア6の既出の設問から180問を厳選し、これをCCSにひとつの
設問群としてアップします。ゼミ担当教員が小テスト機能を操作して、
30問を学生へ出題します。ランダム選択された30問を制限時間10分間
で解き、ゼミ毎に正答率を競います。ですからゼミ毎に問題パターン
は異なりますが、確率的要素が加わることで面白みを増します。

たかが15分の取組ですが、ゼミが多様な(学生構成・運営スタイル・
方法・ICT利用度など)だけに実施には、十分なフォローが必要です。
そこで、予期される不具合を事前に想定して、個別のサポート体制を
整えました。もし深刻なトラブルが生ずれば、今後のイベント継続が
危うくなるからです。ゼミ教室で学生が持参するノートPCを利用する
場合には、サポート要員を派遣しました。また、学術情報センターの
セミナー室に臨時にノートPCを設置し、ここへ移動してもらって実施
するなどしました。幸い大きなトラブルはなく、ほぼ想定内の範囲に
収まりました。

結果として、全29ゼミのうち28ゼミが参加し、計378名の学生が受験
しました。ネット接続の不具合などが原因で受験できなかった学生
はこれに含まれません。また、コア6の対象となる14E生だけで見た
場合は、369/471名(実施ゼミ分)で受験率は78.34%となります。

多様な学生がおり、30近いゼミがあれば対抗イベントに強いゼミと
そうでないゼミがあります。単に受験者の平均点だけで評価しては、
競い合うインセンティブが十分に機能しないと思いました。そこで、
以下の2つの褒章基準を作成しました。

基準G: 受験者割合と受験者平均正答率の幾何平均(Geomean)
基準A: 成績上位5名の単純平均(Average)

まず、基準Gには受験率という指標を加えます。ゼミ生が力を合わせ
競い合うという主旨を謳っているので、コア6の対象である14E生の
履修者のうちどれだけが受験したかという受験率を用います。この
数値と受験者の得点率を乗じて、平方根をとった値(幾何平均)を
比較しました。また、基準Aは少数精鋭のゼミを評価する指標です。
すなわち、ゼミ内の上位5名の得点を単純に平均します。

実施の意義としてあまり理解されないことですが、ほぼ全てのゼミ
が参加したことは高く評価できます。「そんなの企業では当たり前」
と思われるかも知れませんが、「商店街」のようなフラットな大学
教員の組織で、全員の理解と協力を得ることは難しい仕事です。

また、たとえ優れたシステムや豊富なコンテンツがあっても、それ
だけではできないことにも留意が必要です。CCSの小テスト機能を
活用するのであれば2003年でもできたかも知れませんが、当時では
このようなイベントの実現は難しいでしょう。というのも、当時に
比べて、教員のICTレベルや取組への理解が向上しているからこそ、
可能となっているからです。

その他、このイベントで以下のような実績や効果を見い出すことが
できました。

1.CCSの小テスト機能の周知(FD活動)
2.学生の到達度テスト(統一テスト実施)
3.スマホでのアクセス(アクセシビリティ)
4.2年ゼミの実施現状(授業公開とランキング)

スマホからでもCCSの小テストが受験できることを再確認しました。
タブレットを含めたアクセス手段の拡大は、大学教育に大きな変化
をもたらすことを期待させました。


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■最近のゼミ・講義から > 学期末試験の段
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☆関連サイト:

大学の学期末試験のスタイルは、昔と比べればかなり様変わりして
います。本学では名古屋キャンパスへの移転とともに、300名以上を
収容できる大教室がなくなったために、試験の実施方法にも大きな
変更が加えられました。

移転前はテストだけが実施される期間は、14・15週目の2週間を確保
していましたが、移転後は16週目のみとなりました。ですから15週
までは通常授業が行われ、16週目にテストとなります。ただし授業
期間内でのテストやレポート提出については、教員の裁量に任され
ています。

このような措置は、文部科学省が定める15週の授業時間を確保する
ためです。近年、本学も含め、多くの大学が祭日に授業を行うのは、
基準の授業時間を確保する理由からです。また、文部科学省だけで
なく、免許取得のために厚生労働省などへの届出が必要な学系では、
さらに厳格な運用が行われているようです。

このように文科系学部でも「単位の実質化」や「教育の質保証」が
求められています。今までが「レジャーランド」と揶揄されてきた
大学では、このような変化は辛い限りでしょう。時代の変化に対応
できるかどうかは、教員個人の順応性に依存しています。個人的な
感想としては、最初は調整するのに大変であっても、徐々に慣れて
くるものです。特に、アメリカの大学制度を体験した身としては、
日本はまだ改善しなくてはならないことも多いように感じます。

さて、今学期は就任以来初めてとなる中間テストを実施しました。
実施科目は「経済数学入門」です。毎回、プリントでの演習をして
いますが、受講生は一方的な授業形態に慣れているようで、教えて
いても学生に力がついたという手応え・実感がありません。さらに
15週の内容を理解しているかを一度きりの学期末テストではうまく
測定できないと考えたからです。学生が力をつけられる授業運営と
その効果測定には、方法を開発する必要があります。


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■編□集□後□記□
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今月はセンター試験が名古屋学院大学でも行われます。都心にあり
交通の便が良いだけにこのような役割を与えられるのでしょう。

都心回帰といえば、今年は愛知大学が三好から名駅南に移転します。
2年後には、愛知学院大学が市役所北に経済系学部だけを移転予定
です。本学は地下鉄で大きな広告を出すなど、広報活動に力を入れ
始めています。広告だけでなく、真の研究教育力がきとんと裏付け
されていなければなりません。

その意味で、本学はこの数年間で順調に力をつけているように思い
ます。卒業研究発表会やコア6コンペなどを見ても、若手の先生方
の教育指導力は輝いています。大学を取り巻く環境は競争がさらに
激しくなっていますが、若手の先生方に負けないよう頑張ってゆく
つもりです。


■コジマガ・バックナンバー
☆ブログ: http://kojimag.blogspot.com/
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2011年12月24日土曜日

第86号(2011.12.24)


□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第86号
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□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.086
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。

Merry Christmas!

今年はクリスマスが近づくに連れ、急に寒くなって来ました。読者の
諸氏は風邪などひかぬようにご注意ください。自分は、幸いこの数年、
風邪をこじらせることなく過ごせています。冬に気をつけている習慣
といえば、喉に違和感を覚えた時、直ちに葛根湯を頓服することです。
ただし、こじらせてからではあまり効き目がないように思います。

さて、恒例の児島ゼミOB会の忘年会が開催されます。時間の許す方は、
是非ご参会ください。アメリカ土産を持参しますので、抽選会で配り
ましょう。

 集合:19:00 名鉄瀬戸線栄町駅改札口前
 場所:世界の山ちゃん本店
 時間:19:30〜


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■NGU短信 > facebookとブログの段
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☆関連サイト:http://www.facebook.com/kojimaseminar.net
☆関連サイト:http://kojimag.blogspot.com/
☆関連サイト:http://blog.ngu.ac.jp/dokusho/

コジマガ第81号で紹介したfacebookですが、少しずつ機能が分かって
きました。グループと公式ページとの違いや使途を覚えたところです。
基本を理解するにも、実際に使ってみなければ分かりません。しかし、
FBの進化が続いているので、マニュアルと画面が違うこともあって、
できるはずが上手くいかないことも度々です。そこで、FBを登録した
ばかり(しただけ)の人に向けて簡単に説明します。

まず、グループはメンバ以外には非公開として設定してます。メンバ
登録は「児島ゼミ」を検索してもらい、<グループへの参加を希望>
をクリックしてください。するとリクエストが管理人に送信されて、
承認を得た後にメンバとなります。また、すでに児島ゼミのグループ
に所属している友人が(勝手に?)追加してしまうこともあります。
現在、FBの児島ゼミに31名のメンバがおり、彼(女)らは自分の友達
を追加できます。登録方法は、グループの画面からページ右段にある
<+グループに友達を追加>へ友人の名前を入力すればOKです。

一方、「Kojima-Seminar.NET」のfacebookページ(旧、ファンページ)
はFBに登録していない人にも公開されています。これは、企業や商品
などが「公式ページ」として利用するもので、今やFB内で多くの企業
がこれをマーケティングツールとしています。ユーザに「いいね!」
ボタンを押してもらうことで、広く知ってもらえる「クチコミ」機能
が注目されています。ゼミでは、すでに小林君が作成してくれたので、
一度、参照ください。ウォールには忘年会の案内が掲示されています。

先日、公式ページにiframeを設定しました。初めてページを訪問した
人には「Welcome」ページが表示されるという機能です。このページに
対して「いいね!」ボタンを押すと、次回からは最初に「Welcome」の
ページトップページが表示されなくなります。これはFB用のアプリを
作成・登録するものですが、facebookページの種類によっては、機能
しないようです。

さて、コジマガは8年余りで86号に至りました。バックナンバーは.NET
にアーカイブしていたので、後日参照するのに大変便利でした。また
アメリカ研修中ではWeb2.0ツールの試みとして、コジマガ配信記事を
URLを短縮してTwitterで流し、アクセスログをチェックしてみました。
帰国後、facebookを活用するOBが増えきたので、コジマがの在り方も
再考しなければならないと感じました。

そこで、メルマガをBloggerにまとめる作業に着手しました。コピペの
作業は至って快適でしたが、1日の投稿数が50を超えると発信規制が
かかります。また、Bloggerでは新たにファビコンが利用できるように
なったので、これを設定してみました。ここでファビコン画像が他の
ブログとは共有できないことを発見しました。

ブログが完成すると情報はかなり整理されます。当然ですが、時系列
表示なので1年毎の発信数が明示されます。また、ラベルを付ければ、
記事の分類が可能です。この機能によって「本の紹介」の記事だけを
まとめることができ、20冊以上を紹介してきたことも分かりました。

必要な記事を探す苦労がなくなったので、参照は大変楽になりました。
名古屋学院大学の図書館が発行している「栞輪(しおりん)」という
読書ブログがあります。ここで本に関する記事を募集していたので、
コジマガのブログリストを活用してはどうでしょうと連絡をしました。
すると早速、記事にしてくれました。これまで書き綴ってきた記事が、
改めて活用されることを目の当たりにし、感慨深い体験です。

Web2.0ツールの威力を改めて実感するこの頃です。


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■最近のゼミ・講義から > 教育コンペティションの段
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☆関連サイト:http://www2.ngu.ac.jp/~kkojima/seminar/rublic.pdf
☆関連サイト:http://www.nagoya-stock-exchange.com/
☆関連サイト:http://www.cccties.org/senryu/

ゼミ募集も終わり、次年度の3年生メンバの構成がほぼ固まったので、
内定者を一堂に集めてゼミの事前指導をしました。来年度はアメリカ
で覚えたルーブリックに基づいて指導する予定なので、すでに渡した
書類にチェックさせて回収です。1年後には就職活動が始まるだけに、
4月からスタートしていては実質9ヶ月しかありません。長期休暇を
無駄にせず、ロケットスタートができるよう指示を出しました。

さて、経済学部2年次ゼミを対象にして12月15日よりゼミ対抗コア6
コンペという学部イベントが行われました。これは約30のゼミで授業
時間でコア6に関する小テストを実施するものです。CCSの小テスト
機能を利用して30問を出題します。どれほど正答を得られるかをゼミ
ごとに競いました。このイベントの詳細については、次回コジマガで
報告することにしましょう。

また、コンペでは名古屋証券取引所が主催する株式投資コンテストを
授業の中で紹介し、学生に参加を求めました。名証のセントレックス
にある銘柄が取引の中心なので、これは地元企業名や業績を知る機会
となります。経済学部にとっては、現実の地元経済の動きを学習する
だけでなく、キャリア教育としても意味があります。さらにICTを使う
オンライン・トレード(バーチャル取引)を学生時代に体験すること
も、悪いことではありません。

さらに名古屋学院大学も参加しているTIESでは、大学川柳コンテスト
の一次選考が修了し、一般投票が行われています。このようにネット
でイベントに参加すること、評価に加わるすることを体験することは
情報社会の中では貴重な経験です。

学生へ参加を促し、このようなコンテストを通じて、興味関心を高め
る機会が増えてきたように思います。「何もそこまで」という意見も
あるかも知れません。しかし、現実の経済社会の動きに対して興味が
希薄な学生は多いだけに、そのような経済学部生を大学が社会へ送り
出してはならないと思います。

成績優秀者に対する賞品が、参加のインセンティブとして十分に機能
しているかといえば、思った以上には効果はありません。興味関心が
広がらない大学生に対して、少しでも関心を喚起させる仕掛けが必要
です。山本五十六の言葉「やってみせ、いって聞かせて、させてみて、
褒めてやらねば人は動かじ」は、まさにその通りです。学生を自主的
に参加するように仕向けることの難しさを実感するこの頃です。

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■編□集□後□記□
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☆関連サイト:http://www9.nhk.or.jp/sakanoue/

年末の大河ドラマとして2年前から始まった『坂の上の雲』がいよいよ
佳境を迎えています。この作品は私が大学時代に読んで、感動した作品
のひとつです。(当時、司馬遼太郎作品にはまっていました。)ドラマ
化されることをとても楽しみにしていました。

放映前年に伊予松山へ行く機会がありました。すでにその時にはロケが
進んでおり、街中にも大きな垂れ幕が目に付きました。スケジュールに
余裕がなかったために、市内観光はほとんどできませんでした。しかし、
朝早起きをして、道後温泉での入浴をした帰りに、秋山兄弟ゆかりの地
へ足を伸ばして、その銅像を写真に収めたことを思い出します。

2011年11月26日土曜日

第85号(2011.11.26)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
□―――――――――――――――――――――――――――――
■□□> コジマガ kojimag@    第85号
□───────────────────――2011.11.26─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.085
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


学園祭中に開催されたホームカミングデーでは、なんと14名ものゼミ卒業生
と再会することができ、とても楽しい時間を過ごすことができました。ただ
パーティ会場内でスマートフォンやタブレットを出していた光景は、他の人
からは異様な集団と思われたかも知れません。(笑)

パーティ終了後も新館で、フェアトレードコーヒーを飲みながら懇談でした。
facebookへの投稿やモバイルWiFiルーターの速度比較など、外出先でできる
ことに時代の流れを感じます。帰国後、iPad用にドコモでXiを新規契約して、
4G(実際は、3.9G)を実感しています。アメリカでの4Gの宣伝に比べ、日本
の通信キャリアのそれは控え目のような気がします。


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■NGU短信 > デジプレと卒業研究発表会の段
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☆関連サイト:http://www.ngu.jp/system/article/detail/1342

秋は、卒業研究発表会の季節です。昨年から3年間はゼミ生の出場機会は
ありませんが、学生が真摯に取り組んでいる姿を観るのは良い刺激です。
現在の4年生には2年次ゼミで教えた学生がおり、4名が発表予定です。

一昨年前の卒業生以降は、全員が1年次に「デジタルプレゼンテーション」
(デジプレ)を受けているので、Powerpointでの発表が標準になりました。
それまでは、用意したレジュメを読み上げるだけやPowerpointでも見るに
耐えない雑なスライド(もちろん操作も覚束ない)発表も散見されました。
当時も全員がノートパソコンを持っていましたが、プレゼンやWebページの
作成を扱う授業の「コンピュータコミュニケーション」は選択科目でした。
実習科目は、少人数で概して講義科目よりしんどいということで敬遠され、
履修者数は減少の一途を辿っていました。全学共通科目ということもあり、
ノートパソコンの教育効果を確認することはできませんでした。

大学の名古屋移転を見据えて、2006年度からはカリキュラムが大幅に変更
されました。大きな特徴の一つは、経済学部は1年全員に春「デジプレ」、
秋には「OA実習(現、データ表現技法)」の2科目を指定科目として開設
したことです。これらの新規科目は経済学部の専門科目に位置づけ、内容
を社会人として必要なコミュニケーション能力のひとつであるプレゼンと
適切なグラフの作成能力に特化させました。講義内容を十分に検討して、
インストラクターによるPowerpointとExcelの実習が始まりました。

開設当初はいろいろと軽口を叩かれたものです。「必修科目でないと3割
ぐらいの学生しか最後まで続かないだろう」とか「今さら、Powerpointを
教える時代ではない」などさまざまです。当時、ゼミでもExcelで適切な
グラフが作れない、プレゼンの基本技能ができていないという事態を目の
当たりにしていただけに、教室で起きている事情を全く意に介さない人達
の戯言と見なしていました。同時に、必ず教育成果を出そうという意欲が
湧いたのを覚えています。ちなみに、2科目の単位取得率は現在でも70%
を超えています。

さて、これらの科目が始まり2年目のことです。学生指導に熱心な先生が
次のような質問をしてきました。「2年生のゼミで学生にプレゼンをさせ
たところ、全員がPowerpointできちんと発表できるが、一体どうして?」
と。カリキュラムの変更とその狙いを説明すると、いたく感心されました。
やはり、一部の学生ができることと全員ができることには、格段の違いが
あります。それまで、彼のゼミで実施してきたできない学生の指導が不要
になったことを見ても、組織として大きな改善といってもよいでしょう。

4年後の卒業研究発表会では、発表者全員がパソコンを使ってプレゼンを
することができました。この事実に安堵するとともに、一応の教育成果を
上げることができたと確信しています。もちろん、情報リテラシー教育に
疑念を抱く人はいまでも少なくありません。しかし、全員ができることは
いかに大変であるかは、現場で多くの学生の操作能力を見て、教えてこそ
分かることでないかと思います。

現在、大学改革のキーワードのひとつは「学士力」です。大学を卒業して
もどのような力が身に付いたのかが目に見えません。経済学部を卒業した
ならば、少なくともこの程度の知識や技量は身に付いたという内容を広く
詳らかにしなくては、大学の存在意義を問われることでしょう。その点で、
この取組みは全学生をできるようにした意味で「学士力」のひとつを実現
したといえるかも知れません。瑣末なことではあるけれども、学部の教育
目標と一致した教育内容を達成しているのではないでしょうか。ただし、
就職率という数字に現れていないだけに、社会的に注目されませんが・・。

最後に卒業研究発表会の感想です。2年後には再びゼミ生達を出場させる
ように指導しますが、全体にレベルが上がっており、決勝へ進出するだけ
でもかなり難しくなっているという印象です。特に、若い先生方はゼミ生
をしっかり指導されており、早い時期から取り組ませないと互するだけで
大変と思いました。

いずれにせよ教育力の競争で、大学としてとても良い傾向にあります。


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■最近のゼミ・講義から
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前号でも報告したように秋学期には従来の科目に加えて、新しい授業の
「マクロ経済学入門」と「経済数学入門」を担当しています。授業も約
半分が終わりましたが、この2ヶ月程でいろいろと分かってきました。

まず、マクロ経済学です。指定のテキストは『マンキューの入門経済学』
で、この内容通り教えるという申し合わせになっています。そこで準備
として教科書を読むと経済学の流れは、これまでとは違ったアプローチ
になっています。例えば、消費関数の記述がないので、乗数プロセスが
丁寧に説明されていません。ミクロでも効用関数や無差別曲線を扱って
いないのにも驚きました。その代わりに現実のデータや金融面に多くの
紙幅を充てているように思います。

教える内容が過渡期であることは理解できましたが、このような時には
いろいろ困ったことが起きます。例えば、すでに既習事項と思って授業
をしても、受ける学生は初めての内容なので、チンプンカンプンという
ケースが出てきます。また、公務員試験の専門科目では伝統的な内容が
出題されているだけに、大学の授業の延長線上になっていないことです。
(元来、公務員試験は範囲が広いので、大学の学習範囲だけではとても
歯が立ちませんが・・・)

一方の数学です。最近、私立大学は推薦入試などで多くの入学者を確保
しており、一般入試での入学者割合が減少しています。また、入学者の
基礎学力不足が問題となっている背景には、学力試験を課さないような
入試形態が増えてきたことも起因しています。多様な学生を受け入れて、
入学後の授業レベルを維持するにはリメディアル教育(高校までのやり
直し)が重要になります。このようにいずれの大学でもバラバラな学力
レベルをいかに考慮しながら授業を進めなくてはなりません。

特に、私立大学の文科系では高校の時から数学を諦めてしまった学生も
少なくありません。そのような中で、数学を使い経済理論を理解させる
のは至難の業です。少しでもギャップを補うために2年前に設けられた
科目が「経済数学入門」です。毎回、演習などで受講生の理解度を確認
すると以下のことが分かりました。(1)中学・高校の数学で扱う設問、
いわゆる計算問題はパターンを教えれば可能、(2)これが変数になる
とかなり理解に苦しむようで、(3)これが文章題となると途端に理解
不能になってしまう、という傾向があります。

かつての大学受験地獄は楽勝へ、その代わりに就活地獄が待っています。
学生が積み残した課題はすべて先送りにされた感がありますが、これに
愚痴をこぼしたり、誰かに責任転嫁するのでなく、現実の課題を直視し、
少しでも解決法を探るしかありません。


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■編□集□後□記□
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☆関連サイト:http://www.tcmit.org/

早いもので、帰国して3ヶ月が経とうとしています。暖かな秋でしたが、
急に冬が訪れて、枯れ葉も色づき、いよいよ季節感がでてきました。

月初にフロリダの友人が名古屋へ遊びに来たので、産業技術記念館まで
出かけました。ゼミの社会見学を含め、何度か訪れた場所ですが、今回
初めて知ったことがあります。トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎
氏は、量産車の成功を見ることなく逝去していたことでした。

トヨタは紡績業で巨額の富を築いた後、成功するかどうかも分からない
新しい事業へ投資していました。今でこそ自動車は日本を代表する産業
のひとつになっていますが、当時は、海のものとも山のものとも判断の
つかない事業(のはず)です。ここへ本業から巨額の出資をすることに
対し、不安に思ったり疑念を持つ人もいたことでしょう。想像するに、
かなり陰口を叩かれたのではないでしょうか。喜一郎氏の情熱とともに
父である佐吉翁の深い理解や多面的な支援があって、歴史的一大事業が
成功したのだと思いました。

しかし、量産車を見ることなく、世を去らねばならなかった喜一郎氏の
胸中はどのようなものだったのでしょう。

2011年10月16日日曜日

第84号(2011.10.16)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第84号
□───────────────────――2011.10.16─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.084
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


今夏はゼミOB会の開催が見送られたこともあり、来るホームカミングデーでお目
にかかりたいと思います。学園祭の当日で昼のパーティですから、参加しやすい
と思います。また、追加情報はMLはじめ.NETやfacebookなどから流れるかも知れ
ません。

日時: 10月30日(日) 12:00~
場所: 名古屋キャンパス 白鳥学舎 1階


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■NGU短信 > 「浦島太郎」の段
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☆関連サイト:http://www.ngu.jp/

在外研修中であっても、学内の事情はメールの他、CCSやグループウェアなどを
通じて、逐次、入っていました。しかし実際に現場に戻ってみると微妙な違和感
は拭えません。

例えば、教授会です。4月に新任者3名が加わりました。退職者3名と学長就任
で計4名が抜け、さらに自分と入れ替わりで在外研修に出られた先生が1名です。
そして、計8名の交代があったわけで、教授会の光景は1年前と比べればかなり
異なります。また、各種委員会のメンバも交代しているので、報告をされる先生
の姿にも、少なかれ驚くことがあります。

さらに、大学にも細かな変化が目につきます。職員の人事異動や新任人事もあり、
いつもの場所に見慣れぬ人が座っているように感じます。名古屋キャンパスには
曙館の3階に教育支援センターができています。今秋、1階にセブンイレブンが
オープンし、丸善が翼館へ移動したり配置も変わっています。ただ、残念なこと
は研修期間中に二人の先生が病気で在職中に亡くなられたことでしょう。

また、地元の様変わりに驚きます。すでに知っていても実感がないこととして、
愛知県知事が代わっています。交通系ではナマカが導入され、地下鉄は徳重まで
延伸しています。自動車道では名古屋高速東海線の六番北が完成し、環状2号も
かなり伸びているようです。

街並みでは、名古屋駅の周辺は松坂屋ナゴヤエキ店の閉店にともない、地下街
の様相も変わっています。大名古屋ビルヂング裏にある第一ホテルがクローズ
されており、飲み屋街が広がっていることにビックリです。栄地区は大津通の
歩行者天国が始まったこと、シティバンクが移転してApple Storeを彷彿させる
ような作りになっていることです。

その他、新たなスポットでは科学館の巨大プラネタリウム、リニア鉄道博物館
ができています。地上デジタル放送への移行で、自分の部屋にあったアナログ
テレビが見られなくなっていました。「めざましテレビ」のキャスターが交代、
「ぴーかんテレビ」が終了しています。これを機会として、これからはテレビ
と少し距離を置いて生活しようかと思案中です。

ホテル業界では全日空ホテルがCROWNE、サイプレスがメルキュールと提携して、
ワールドワイドな展開に驚きです。一方、丸の内東急インが休業になっている
のを見てビックリです。

これらもたった1年の変化です。


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■最近のゼミ・講義から
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☆関連サイト:http://www2.ngu.ac.jp/~kkojima/seminar/

一年ぶりの授業となると、なかなか調子が上がらないものです。授業前に教卓の
鍵を忘れたり、タブレットのペンを置いてきたり、これまでやらないようなミス
が頻発です。授業中でも、自分の喋りが学生にうまく伝わっていないというズレ
ている(いわゆるスベっている)感覚になったり、どうも納得いきません。

また、今学期は不慣れな科目を担当しています。在外研修から帰国すると担当の
コマ数の関係で、どうしてもそのようになるために仕方がありません。ひとつは
「マクロ経済学入門」です。この科目の準備に頭を悩ましていると、学長が以前
担当しており、その時のレジュメや練習問題を拝借できました。これで、何とか
凌ぐことができ、とてもラッキーです。もうひとつの「経済数学入門」は学生の
レベルがバラバラなだけにかなり苦労しています。

授業に使っているノートPCでタブレットペンの操作、慣れないMSオフィスのUIの
ために要らぬ苦労を強いられています。加えて、昨年春から大学院の授業もあり
今年いっぱいは大変かもしれません。しんどいことも度々ですが、毎回、楽しみ
ながら臨むようにしています。

さて、いよいよ次年度のゼミ募集が始まりました。今年はゼミ生の再募集となる
ので、学内にゼミ在籍する学生はいません。2年生は留学直前の春学期に講義を
受けた学生もいるので、多少は情報があるという感じです。しかし、1年生には
児島ゼミだけでなく、児島の存在さえも知られていない状況です。授業が開始し
2週間ほどしか経過していない中での募集なので、それも当然でしょう。

ゼミ内容を記した演習要項はCCSから事前に提示されており、それをよく読んで
応募してくる学生にはやる気が感じられます。というのも今回の演習要項は、
例年の加筆でなくアメリカで全面的に書き直したので、教える側の真意が必ず
伝わるような表現になっています。それを元に意思決定をしたというプロセスを
考えれば、確かに意欲を汲み取ることができます。さらに今回からは、アメリカ
で使われているルーブリックを提示しています。久しぶりにゼミのサイトを更新
し、ここからダウンロードできるようにしました。(在外研修中に学内ネット
ワークシステムが更新されたので、FTPの設定もやり直しでした)


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■編□集□後□記□
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先日、読売新聞が連載をしているコーナーに掲載するための取材を受けました。
こちらからネタをいろいろ提供しましたが、記者は経済学部で取り組んでいる
コア6に興味を示したようです。もうすぐ記事になるようですが、掲載される
日が判明次第、連絡します。

2011年9月25日日曜日

第83号(2011.09.25)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第83号
□───────────────────――2011.09.25─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.083
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


ハリケーンと台風の合間を縫って、無事に日本へ帰ってきました。帰国翌日から
区役所での手続きや床屋・病院などいろいろとやらねばならないことばかりです。
でも、いずれの場所であっても日本語がOKなので、とても気持ちが楽です。ただ、
車の運転は左右反対になったので、妙な違和感が1週間ほど続きました。

また、日本で食べたかったものを十分に味わい、胃袋と気持ちを満たせています。
たった1年ですが、環境へ対応するためには調整が必要ということを再確認です。


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■アメリカ短信 > 在外研修のまとめの段
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在外研修期間が終了して、事後の整理をしています。必要な事務手続きに加えて、
自分での成果をまとめておく必要があります。この1年間は、毎日がインプット
だったので、それなりのアウトプットもできました。まず、個人的なものとして、

・コジマガの発行:第60号から第82号までを配信
・研修ブログ:370回に到達(計字)
・Twitterでのつぶやきはおよそ200回

そして、仕事のアウトプットは以下のようです。
・本の2章(36ページ)
・UCFの英文記事(約1,200Words)
・長篇論文(計100,000字)
・コア6+(プラス)のコンテンツ作成

以上のような数値化できるもの以外として、以下のような挑戦もあります。
・クラウドツール:Evernote,Dropbox
・SNS:Google+、ほか
・Mac(iPhone4、MacBook Pro、iPad2)
・スポーツ:毎週のテニス・ゴルフ・スイミング

すでにフロリダで取得した運転免許証は失効してしまいましたが、これは自動車の
ナンバープレートとともに自分へのプライスレスな記念品です。また、多くの人達
から研修の感想を求められるので、写真や成果をきちんと整理しておくことが重要
です。


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■NGU短信 > 電子書籍の段
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コジマガ第51号で紹介した冊子『経済学部生のための基礎知識300題』が電子書籍に
なっていました。これは自分の研修期間中に実現して欲しかったタスクのひとつで、
1年前に学術情報センターのスタッフに構想を話しておきました。

帰国早々に、この成果を見せてもらうと自分が期待した以上の出来映えに驚きです。
これまで多くの教材コンテンツは用意されていましたが、これらをどのような形式
でまとめるかは全く指示していません。今回はEPUB形式のファイルとして作成され、
iPadにあるiBookで読むことができます。

今後、細かい点の修正は必要になりますが、プロトタイプとしてまずまずのレベル
にあると思います。また、扱いやすさや読みやすさを追求するとともに、ビューア
でパソコンでも読めるようにしなければなりません。


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■最近のゼミ・講義から
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帰国早々、集中講義のお付き合いをしました。「まちづくり論」での社会見学の
引率です。この科目はTIESを利用した他大学と単位互換を目的としているだけに、
自分も関わる必要があります。受講生は少ないものの、これをビデオ収録・配信
する予定です。

9月7日に実施された社会見学は、懐かしのNGUバスを利用しました。新しく完成
した名古屋高速道路の六番北の入口から、東名阪・東名高速・瀬戸道路を使えば
1時間もかからずに瀬戸へ到着です。直線でないので、距離的には遠回りとなり
ますが、やはりターンパイクなので時間的にはかなり節約できます。

まず、瀬戸蔵の見学です。これまで何度も瀬戸蔵の前を通っていまが、入館する
のは今回が初めてです。特別に館内を案内をしていただき、瀬戸と陶磁器産業の
歴史が非常によく理解できました。また、かつての尾張瀬戸駅の再現に懐かしく
思いました。

次に、窯垣の小径をお二人のボランティアガイドさんに案内していただきました。
台風12号が通り抜けた直後の秋風が感じられる涼しさの中でのウォーキングです。
商店街を通り抜けて、街並みを探索です。また、本業では登り窯の説明を受けて、
作業場の中まで見せてもらいました。瀬戸蔵で見せてもらった展示物が、実際に
稼動しています。短い時間でしたが、貴重なお話を伺うことができました。

かなりの距離を歩いたので、疲れが溜まっています。また、日差しも強くなり、
昼食でしばし休憩です。午後はバスで移動して「さかづき美術館」を見学です。
市之倉のまちづくりとの関わりの説明を受けて、展示物を鑑賞です。ここには
人間国宝の作品がズラリと並んでおり、素晴らしいものでした。

今回の引率の感想としては、再び自分で来てみたいと思いました。かなり自分の
勉強になり、ゆっくり現場を巡るのもよいと感じさせるエリアです。引率の効用
として、アメリカではあまり歩くことがなかっただけに、よい運動になりました。
そして、かなり疲れたので、その夜はぐっすり眠ることができ、時差ボケが解消
できたのも幸いでした。


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■編□集□後□記□
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☆関連サイト:http://www.cccties.org/event/

愛知学院大学で行われたTIESのシンポジウムは帰国当日に開催されたので、残念
ながら出席はかないませんでした。ここで行われたタイピングコンテストの決勝
では、遂に本学が優勝をかざることができました。

東京出張もあって、すっかり日本の生活パターンに戻った感じです。毎日が英語
漬けだったのが、全く英語と出会うことのない生活になっています。自分で意識
して行動しなければならないと感じるこの頃です。