2011年8月3日水曜日

第80号(2011.08.03)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第80号
□───────────────────――2011.08.03─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.080
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


8月になりました。コジマガも80号になりました。アメリカ滞在中に発行したのは
これで21号目となります。約半月に1度という、通常の倍以上のペースで配信して
きました。アメリカでの研修は残り1ヶ月弱ですが、メルマガのネタが豊かになる
よう、少しでも知見を広げておきたいと思います。その原動力となるのが好奇心
でしょう。


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■アメリカ短信 > なでしこの活躍とメディア・リテラシーの段
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☆関連サイト:http://twitter.com/

女子ワールドカップサッカーの決勝戦が行われた7月17日は、アメリカ知人宅で
ホームパーティがあり、ここで世紀の一戦を観戦しました。対戦相手がアメリカ
だけに完全なアウェー状態の応援でしたが、なでしこジャパンの驚異的な粘りに
巨大テレビの前で熱くなります。同時間帯にコパ・アメリカの準々決勝が行われ
ていました。パーティのゲストに南米出身者が多く、パラグアイ・ブラジル戦が
大きな注目を集めています。1階ではコパアメリカ、2階ではワールドカップを
楽しむという、さながらスポーツバーといった状況です。

PK戦の劇的な幕切れにとても感動です。アメリカ応援団は大きなため息と共に、
階下へ降りていきました。iPhoneでTwitterをチェックすると、日本は早朝にも
かかわらず、相当数のつぶやきが流れていました。翌日のネットニュースでは
「サッカー女子W杯決勝でTwitterが毎秒7196ツイートの新記録達成」だそうです。

今をときめくなでしこジャパンだけにその動向は万人から注目されます。歓喜の
瞬間からそれほど時を経ずして、ネットで事件が起こりました。飲み会で大学生
の思慮に欠ける投稿がネットで祭り状態になってしまいました。これに対して、
本人はアカウントを削除し、大学側が謝罪をしたそうです。

5月27日にツィートした「若者の何気ないつぶやきには心配」という発言が現実
になってしまいました。クローズなSNSであるmixiでも不適切な投稿内容は世間
にさらされるだけに、Twitterであれば炎上する危険性は極めて高いと言えます。
加えて拡散のスピードが速いだけに、関係者の事後の対応には的確さと迅速さが
求められます。

これまでタイムラインから学生諸君のツィートを眺めていると、公な場所と私的
な範囲との区別がかなり曖昧な発言が多いことを懸念していました。また、他人
のタイムラインも表示できる(http://bit.ly/lNAtnY)そうなので、一層の注意
が必要と感じていました。というのも採用人事の担当者ならば、応募者のタイム
ラインも参考にするかも知れないからです。さらに検索結果にTwitterの発言が
ヒットしますので、己の発言は誰の目にも触れるのだという意識は常に必要です。
Twitterは衆人にさらしたライフログの一部となるだけに、安易な利用に警鐘を
鳴らしたつもりでした。

このような事件が起こると各マスコミはいろいろなコメントを紹介してくれます。
そのようなニュースを読み「Twitterは危険だから、やらない方がよい」という
考えを強める人達もいることでしょう。しかし、その考え方には首肯できません。
なぜなら、今は新技術が社会へ浸透する過程にあると思うからです。すなわち、
新たなコミュニケーション手段の仕組みや有効性とその限界が理解されないまま
無造作に活用している利用者がいるということです。その意味では、メディア・
リテラシーの問題に帰着するかも知れません。

今後もこうしたメディア・リテラシーに起因した事件が起こる可能性はあります。
Twitterはどこからでもツィート可能なので、大学の授業などでのちょっとした
軽口が露にされることも考えられます。文脈がないつぶやき(一方的な発言)が
独り歩きして、問題を引き起こさないとも限りません。携帯電話が教室にあると
いうことは、ボイスレコーダー・カメラ・ビデオが用意されていることでもあり、
常に外部とコネクトされている状態です。今春に発生した入試問題の不正投稿も
このフレームワークで起こっています。技術の普及によって学習空間も進化して
いるだけに、それに合わせて学校側も柔軟に対応しなければならないでしょう。

周知の通り、Twitterは瞬時にフォロワーへ配信され、本文にはサイトの引用や
写真なども活用できるツールです。リツィートも簡単なので、興味ある記事は
あっという間に拡散します。この機能が東日本大震災の直後に活躍したことは
記憶に新しいところです。また、140文字という文字制限は、いかに伝えるかと
いう書き手の文章力が試されます。字数制限はある意味で、短歌や俳句と似て
いるので、日本語文化には馴染むツールかも知れません。表現が豊かな日本語
を駆使し、実践トレーニングするには最適なツールではないかもと考えるよう
になりました。

マルチメディアに対応した通常のブログと、制限付きとはいえ即時性が長所の
Twitter。ツールの使い分けを覚えてゆけば、情報発信に長けた人材になれるや
も知れません。もちろん、どちらも文字として残るので投稿前には必ず原稿の
再チェックが必要です。原稿を書く時は、真夜中やお酒が入ると筆(表現)が
荒れるので、避けたほうが無難と言われます。自分もそんな状況で作文をして、
翌朝に読み返して恥ずしい思いをした経験があります。その意味で、夜の酒宴
をTwitterで実況するのは、危険極まりない行為でしょう。

いろいろと考えさられる事件です。


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■UCFから > クラウドアプリの段
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☆関連サイト:http://www.evernote.com/about/intl/jp/

UCFでの体験を記事としてまとめるそうなので、メインキャンパスまで出向き
インタビューを受けました。1時間弱のインタビューでしたが、この研修での
振り返りという良い機会になりました。日頃からブログやメルマガでまとめて
おいたことが大変役に立っています。これもひとつのeポートフォリオの効用
でしょう。

このインタビューの前後の時間、スタッフの皆さんといろいろと情報交換です。
聞きたい内容は、アメリカでのEvernoteの普及状況です。これまで尋ねた人は
「知らない。それは日本のものか?」と切り返されて、ビックリしていたから
です。結論として、スマートフォンを使っている人以外は、Evernoteをあまり
知らないということです。たしかに、これまで質問した人がスマートフォン・
ユーザではありませんでした。そこで、日本での応用事例としてEvernote連携
商品「ショットノート」やスキャナーとの連動、デジタルペンの活用事例の話
をしました。非常に日本的な事業展開なだけに、大変興味深そうであったのが
印象的でした。

最近は、EvernoteよりもSpringPadが良いという話も聞きました、というのは、
サイトにある情報のメモ書きの利便性が高いからという理由だそうです。また、
今アメリカで人気アプリであるFoursquareやYelpの存在を教えてもらいました。
10年以上前ならば、アメリカのビジネスモデルを日本流にアレンジすることで、
大成功を収めた話をよく耳にしました。最近はグローバル化が進み、流行関連
の情報も速いので、きっとこのような新ビジネスに着手している企業もいると
思います。


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■編□集□後□記□
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研修も終わりが近づいてくると、自分の仕事のペースも上げざるを得ない状況
になります。まるで夏休みの終わりに宿題に追われる学生のようですが、切迫
した悲壮感が少ないのは、出発前に自分で決めた目標だからかも知れません。
さらにゴールも見えかけているだけに、ちょっとした充足感もあります。

日本にいるより自分の自由な時間があり、タイムマネジメントしながら仕事を
進めることができる今の環境に満足しています。

2011年7月15日金曜日

第79号(2011.07.15)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第79号
□───────────────────――2011.07.15─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.079
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


ネットの情報では、東海地方は例年よりも早い梅雨明け宣言がされたそうです。
本格的な夏の訪れは開放的な気持ちにさせるものですが、今年は原発のドミノ
停止によって、日本全国が深刻な電力不足にさらされているようです。衷心、
暑中お見舞い申し上げます。暑さ厳しき折、くれぐれも無理はせず、熱中症に
ご留意いただきお過ごしください。


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■アメリカ短信 > 独立記念日と花火の段
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☆関連サイト:

7月4日はアメリカの独立記念日で祝日です。今年は月曜日なので土曜日から
3連休でした。連休前後に何人かのスタッフの姿を見かけなかったので、この
期間を利用して長期休暇をとっていたようです。また、あちこちでイベントが
行われており、これに合わせたパーティーに招待されました。

ホームパーティでは、自宅のガレージ前に大きなバーベキューグリルを用意し、
男性諸氏が食材を焼いています(やはりBBQはアメリカン・ダディの仕事です)。
独立記念日にはホットドックがつきものだそうで、BBQではアメリカンサイズの
肉塊に加えて、ホットドックのソーセージやハンバーガー用のハンバーガーを
火にかけます。ちょっと変わった光景と感じましたが、日本人がBBQで焼きそば
や焼きおにぎりを作るのは、外国人にとってはかなり異様だと思いました。

食材を焼き終わると家の中へ持ち込んでのパーティです。どのホームパーティ
も同じスタイルで、プールサイドに食べ物や飲み物を並べて、皆が思い思いに
楽しんでいます。どの食材もアメリカンサイズで、普段はこのようなサイズは
食べないようにしていますが、この日ばかりは遠慮なく頂きます。

さて、独立記念日には花火がつきものです。外が暗くなってからのスタートで
すから午後9時30分です。サマータイムなので、夜8時半を過ぎないと陽は落ち
ません。イベントのメイン会場はモールの北側にある湖に設置され、夕方から
コンサートなどで盛り上がっているようです。10万人の見物客が集まる大規模
なイベントなので、モールがある大通りまで出ると車で大混雑です。そこで、
大通りの手前にあるパーキングから見物することになりました。開始30分前に
なると、ここにも多くの人が集まってきました。

夜空を見上げるとセスナが飛んでいるので、てっきり上空からの花火見物だと
思ってました。しかし、機体の下には電光掲示板が取り付けられており、何と
広告です。ビーチではバナーをつけたセスナ機の旋回は何度か見たことがあり
ましたが、さすがにこれには驚きです。(広告効果は十分なのでしょうか?)

いよいよ花火が始まりました。多くの人が集まるだけあり、なかなかの豪華さ
です。規模は日本の花火大会とほぼ同じですが、近くの数カ所でも花火が打ち
上がっていることにもビックリします。日本ならば、〇〇〇花火大会といえば
メイン会場だけの花火であって、近場で同時に花火を上げることはありません。

また、オーランドのダウンタウンであるレイクエオラで大きな花火大会が開催
されていました。ちょうど帰り道なので、ダウンタウン脇を走る高速道路から
は花火がよく見えます。まっすぐ上に伸びる高層ビルと円や曲線を描く花火の
コンストラストがとても見事です。驚いたのは、高速道路の脇に停車して見物
している車が多いことです。明らかに危険であるにもかかわらず(きっと日本
ならば、事前に警察による規制がされることでしょう)、平気で見物している
姿にアメリカらしさを感じました。

ダウンタウンを抜けると、自宅まで真西に向かい一直線にExpress Wayを走り
ます。約10分超ほどの道のりですが、道路の両サイドにいくつもの花火を見る
ことができます。コミュニティ毎に独立記念日をお祝いしていることが、よく
分かります。これはニューイヤーズ・イブと同じ光景です。そして、夜11時過
ぎにアパートメントに戻った後、NYで行われているMacy'sのFireworksをTVで
観ました。一体何発の花火が使われているのかと思うほどの豪華さです。

花火によって国民が独立記念日を祝っているという雰囲気を直に味わうことが
できました。日本でもこのように派手なイベントでお祝いする休日があっても
良いような気がします。


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■UCFから
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☆関連サイト:http://cdl.ucf.edu/

UCFで所属している組織がCDLで、Center for Distributed Learningの略です。
日本語の文献をチェックしたところ、これを「分散学習センター」と訳して
ありました。しかし、この訳語にちょっとした違和感を覚えます。

Distributed Learningがどのように訳されるかを調べると必ず出てくるのが
ADLです。これはAdvanced Distributed Learningの略でアメリカの国防総省
に属する組織です。ここではeラーニング規格の標準化であるSCROMを進めて
いるそうです。たしかに軍の基地では、オンラインでの教育が進んでいます。
多様な背景を持った人が入隊するので、各人に適した教育プログラムを用意
する必要があります。また、常に研修も必要となりますが、軍隊任務もあり
教育研修ばかりに集中するわけにもいきません。学校のようにクラスを編成
して、一堂に介した授業が定期的に実施できる保証はありません。

すると教育プログラムを効果的に、かつ効率的に提供する仕組みが必要です。
独習でも可能な教材の開発、オンラインでの授業やディスカッションという
運用形態も求められます。教育学や軍事的なプログラムに疎いので、正確な
知識は持ち合わせていませんが、こうした中で使われるようになった用語が
Distributed Learningではないだろうかと推測します。なお、その反対語は
Massed Learningで、訳語は「集合教育」でなく「集中学習」だそうです。

しかし、UCFにおけるCDLの活動を間近で見ていると「分散」という用語では
当てはまりが悪いような気がしてなりません。というのも、英語辞書を見る
とDistributedには「分配された」というの意味はありますが、「分散」に
近い意味は見当たらないからです。さらに、英語の辞書の用例を見てみると
「be distributed on the Internet」は「インターネットを通じて配信され
る」という訳が掲載されています。

CDLが携わっている主な事業は、集合教育で利用されるコンテンツをうまく
チャンクダウンし、個々のエレメントをブラッシュアップしています。また、
それぞれの部品を利用者(インストラクター)が使いやすく、受講者の理解
が深まるように配信するという業務を担っています。すなわち、授業に対し
インストラクショナル・デザイナーがWebでも運用できるように精査をして、
イラストレーター、Webデザイナー、プログラマー、写真家らが学習者の興味
を惹きつけるようなコンテンツへと磨きあげているのです。これらはWebを
中心に配信されますが、対面教育でも利用されるので、必ずしも「分散学習」
という感じではありません。

その他にも関連用語として、Distance Learning(遠隔教育)もありますが、
これも含んでいるのがDistributed Learningであるように思います。コース
化された学習コンテンツをネットなどを通じて教育者や学習者へ届けるのが
使命であるだけに、Distributed Learningの訳は「教育配信」、そしてCDLは
「教育配信センター」とするのが実態に合っているように思います。


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■編□集□後□記□
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先日、NGUの学長ブログが開設されました。NGU公式サイトからアクセスでき
ます。学長は経済学部所属ですので、在学時に学長の授業を受けた人も多い
と思います。一度、チェックして下さい。多忙にもかかわらず、トップ自ら
が直接、自分の言葉で伝えようする姿勢には頭が下がります。何より心理的
な距離が縮まります。

2011年6月27日月曜日

第78号(2011.06.27)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第78号
□───────────────────――2011.06.27─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.078
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


フロリダでは最近、非常に暑い日が続いています。天気予報で華氏100度を示すこと
さえあります。そして毎日、必ずと言っていいほど夕立がやって来ます。日本で雷
を伴なった豪雨といった感じです。1時間もすれば止みますが、あまりの激しさに
ちょっと面食らうこともあります。

夕立がいつ頃に止むのか?さらに厳しくなるのか?という不安がありますが、報道
機関からの天気情報はそのような心配を払拭します。かなり具体的で詳細なデータ
なので、雨雲があとどれくらいで通りすぎるのかが分かります。雨雲の状態を3Dで
表現したり、局地的なデータが提示されるので、とても便利です。素人ながらに、
日本でこのようなシステムを導入すれば、ゲリラ豪雨など対策に利用できるのでは
と思いました。


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■アメリカ短信 > Web2.0ツールの段
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☆関連サイト:

こちらではMacな日々を過ごしています。もちろん研究所で英語版Windowsのデスク
トップを用意してもらっていますが、毎日、MacBookを持参しています。例えば、
メインキャンパスへ向うシャトルバスの中ではiPhone4をいじり、自宅ではiPad2で
ネットへアクセスしています。帰国後は、MacとWinPCとの共存になるでしょうから
これらのディバイスとのデータ交換が効果的にできるような手法を覚えています。

まず、Blogやメルマガなどの原稿やメモ書きは基本的にエディタを使っています。
Macにもmiを入れてますが、Evernoteでほぼ代替できます。毎日使うことでやっと
操作にも慣れてきた感じです。様々なTIPSがあると思いますが、残念ながらまだ
そこまで至っていません。

そして、情報整理のツールとしてのDropboxには、少しずつデータのバックアップ
を入れています。写真はPicasaで管理して、整理したものをウェブアルバムへも
置くようにしています。論文や文献のPDF管理はMendeley、読書管理はブクログと
便利なツールへ徐々に移行中です。

さらに、自分の情報発信はこれまでコジマガのMLだけでしたが、ブログ、Twitter
などを試しています。Twitterは150程度のつぶやきから、仕組みなどがようやく
実感できはじめました。しかし、FBは未だに様子見です。どちらも半オープンな
ツールなだけに不用意に投稿しないよう気遣っています。Blogは、研修開始以来
300日以上書き続けています。でも、文字情報が中心で、ブログツールにはあまり
関心を払っていませんでした。ブログツールを利用すれば、最近流行りのSNSとの
コラボが簡単に実現できるので、上手く組み合わせてるテクニックも覚えた方が
よさそうです。マーケティングツールとしてこれらが重宝されているのが、よく
分かります。

インターネットの音楽配信サービスでは、Sky.fmやLast.fm、Pandoraを利用して
おり、仕事時間のBGMとして活躍中です。これらで驚いたのは、Sky.fmにJ-Popの
ジャンルがあること、Pandoraは上場で2億ドルもの資金を調達したことなどです。
日本のサービスとはあまりに差があり過ぎて、厳しい規制ととも硬直化した日本
の業界の将来に不安を覚えます。優れた技術はあっても、素晴らしいアイディア
や新しいビジネスを創発する環境にないことは確かです。

こうして振り返ると、ネットの世界ではアメリカが断然優位に立っていることが
よく分かります。ハードだけでなく、ソフトの分野においても日本の活躍を期待
しています。


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■UCFから > Leaders Summitの段
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☆関連サイト:http://www.aascu.org/

AASCUが主催する'The Leaders Summit 2011'が、UCFで6/23,24の2日間に渡って
行わました。American Association of State Colleges and Universitiesの略
なので、AASUCにはアメリカ州立大学協会という訳が当てはまるように思います。
このカンファレンスはEDUCAUSEとのジョイントですから、ICTの話題が中心です。
サブタイトルには'Designing Learning Environments for the 21st Century'が
付けられていますから、今の学生に適した学習環境を構築するかという内容です。

今回は、全米18の州立大学からリーダー達を中心として、総勢80名ほどが集まり
ました。参加大学に共通する点として、とりわけ大きな大学でなく、それだけに
大学の使命である教育をいかに効果的かつ効率的に運営するかという問題を抱え
ていることです。そこで、問題意識の共有に加え、現状を見つめソリューション
やその手がかりを掴もうというのが会の狙いです。

確かにフロリダも他の州と同様に、厳しい予算カットが実施されています。逼迫
した財政事情の中で、いかに次のステップを見い出すかという点ではUCFは良い
事例になるでしょう。急増する学生、変化する学生に対応して、新しい学習環境
をICTで創造し続けている先進事例は大きな参考になるはずです。

さて、会議は参加者にUCFや主催者のスタッフを含めると100名以上になるために
メイン会場は隣の建物であるパートナーシップ3で行わました。研究所のフロア
だけでは手狭なことから、広い会場を確保することで、軍の施設を借りました。

初日は朝8時半のスタートです。主催者の冒頭の挨拶で、基調講演が変更になる
という連絡がありました。フライト欠航の影響で、EDUCAUSEの会長が来られなく
なったそうです。基調講演がキャンセルになるというハプニングが起こっても、
慌てることなく、うまく対応する運営には感心します。

3つの講演に続き、4つの事例を担当者から聞くというイベントがありました。
4つのパーラーで構成され、参加者はこれらを20分ごとに回るというものです。
具体的な教育事例の紹介として、心理学・数学・英作文の各責任者が取り組みを
説明します。また、今の学生たちがよく利用するICTツールの紹介もありました。

昼は用意されたランチボックスをいただきながら、次の講演へと入ります。休憩
を挟みながら午後5時20分まで研修は続きました。1日目の最終イベントで懇親会
が開催され、ここでUCFの総長を直にお見かけました。恰幅のよいおじいさんで、
すでに73歳だそうです。主催者からの紹介コメントで驚いたのは、何と20年以上
もトップの職を務めているそうです。UCFは創立47年目ですから、半分近くの間
ガバナンスしていることになります。

事実確認もかねて同僚に事情を聴けば、UCFの総長は選挙で決定されるのでなく、
州からの指名だそうです。確かに州立大学ですから上手く経営できる人物を州が
選ぶのも当然でしょう。無能な人物によって放漫経営をされたら、州として住民
に説明がつきません。大変納得するとともに、何ともアメリカらしい制度に感心
しました。

自分が知っているだけでも、今の総長はITを活用し、経営効率を向上させるとも
に大学の名声を上げることに成功しています。巨大なアメリカンフットボールの
スタジアムを建設して、大学の人気を高める努力を続けています。(アメリカの
大学のトップはオペラからアメフトまでの話ができないと務まらないという記事
を読んだことがあります。)さらに、昨年オープンしたの医学部に続き、歯学部
も新設予定になっています。かなりやり手のリーダーであり、まるで企業経営者
のようです。アカデミックキャピタリズムの国ですから、優秀なリーダーの存在
が大学にも求められるのでしょう。

AASCUの2日目は、開始時間がさらに早まり8時からです。多くの人は前日の疲れ
を残しているはずですが、司会者は結構な高齢にも関わらず、元気が漲っている
という感じです。やはりこのような会をマネジメントできる人はエネルギッシュ
でなければなりません。

この日のイベントはできるだけ参加型にする工夫が見られます。例えばグループ
ディスカッションは3グループに分け、発言をしやすくしています。また、全体
ミーティングでも、壁に貼られた大きな紙にそれぞれがアイディアを書き出して、
共有するという仕掛けがみられました。

全体ミーティングも正午で終了です。最後は、出席者にアハ体験を語ってもらい、
締めくくりです。詳細まではわかりませんが、この会で獲得できたものは大きい
ようです。1日半のタイトなスケジュールでしたが、それでも出席者は満足した
様子でした。生産性の高いミーティングをオーガナイズすることの重要性を体感
しました。このような大会にオブザーバとして参加できたことはラッキーでした。


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■編□集□後□記□
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AASCUの会場ではiPad2を使っている人を結構、見かけました。スマートカバーを
台座にしてメモを取ったり、メールをチェックしたりしていました。やはり驚い
たのは、カメラを使って必要なスライドを撮影していたことです。10インチ以上
の画面で撮影している姿はちょっと異様な感じがします。

2011年6月11日土曜日

第77号(2011.06.11)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第77号
□───────────────────――2011.06.11─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.077
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


今回で第3回目となる全国大学対抗タイピング大会(学内予選)がTIESで開催中
です。今年は在外研修中につき傍観ですが、情報処理の授業の中扱っているので、
NGUからの参加者は加盟校でも断トツの規模を維持しています。また、現在、個人
部門でも1位、2位と活躍しており、喜ばしい限りです。

実際のタイピング大会の状況は、TIESにログインするのが一番でしょう。TIESの
アカウントについては、コジマガ第32号に書いた通りですので、興味のある方は
是非、ご参照ください。


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■アメリカ短信 > 「豊かさとは何か」の段
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☆関連サイト:http://bit.ly/kojimag068

アメリカで生活をしていると世界中のさまざまな国に出会います。出身の人々で
あったり、食事などの文化であったりします。国際的な政治経済情勢についても
まるで自国の出来事のごとくニュースで扱っています。さすがに世界から多くの
人を集めている国だけあります。

コジマガ第68号でも書きましたが、平均的な個人宅に訪れるとこの国の豊かさを
実感します。庭付きの広い敷地にガレージと自宅があり、ほとんどがプール付き
です。プールの使い方はただ泳ぐだけでなく、プールサイドにテーブルを出して
涼みながらのパーティに使われます。プールサイドにはカウンターを置き、飲み
物や食べ物を思い思いに取りながら、初めて合う人同士が会話で盛り上がります。
BGMは、ノートPCでインターネットラジオにアクセスし、外付けスピーカーから
流れてきます。もちろん気が向いたらプールで遊んだりします。

日本でプール付きの自宅を持つ人は億万長者に限られます。自宅でのパーティと
いう文化が、プールとセットになっていません。屋外プールの利用期間は3ヶ月
程度ですし、敷地代外にもメンテナンスで費用が発生します。それならば、屋内
プールを持つスポーツクラブの会員となった方が世話入らずで、結果として安く
上がります。

クルーズコントロール付きの大きな車で優雅に走行し、長距離の移動も可能です。
道路や駐車のスペースは広く、渋滞も日本ほどひどくないので、平均速度は日本
よりも上です。さらに高騰したガソリンも比較すれば日本より安いという、完全
な車社会になっています。また、携帯電話はすでに4Gへ向かっており、GPSでの
サービスも日本より進んでいるように思います。

このようにアメリカの生活環境を考えると、余裕が感じられます。経済力のある
日本から見ても、アメリカにはかなり多くの魅力があります。もちろん、個人の
経済的な裏付けは最低条件ですが、安定収入や将来性が保証されるのであれば、
閉塞感が漂う日本にいるよりもいいかも知れません。経済発展途国の出身者なら
ば、なおさらこの国に惹かれるでしょう。世界中の国々から多くの人が集まって
くるのも、首肯できます。

英語圏で生まれ育った人以外は、皆、英語を覚えて、この国で生活をしています。
経済力を身につけて言葉や生活習慣を身につければ、自国で暮らすよりも快適な
生活を送ることができます。この国で暮らしてみて「豊かさとは何か」を改めて
考えてしまいます。


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■ 本の紹介
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☆関連サイト:http://bit.ly/mckK4L

『歴史は「べき乗則」で動く』,マーク・ブキャナン著(水谷淳訳),ハヤカワ文庫
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渡米して2冊目(電子書籍も含めると正確には3冊目)となる日本語の本を読了
しました。自分の研究材料にもべき乗分布が関連していることもあり、これまで
ネットワーク理論関係の書籍を集めていました。この本はタイトルを見ただけで
購入し、所謂「つんどく」状態になっていました。文庫なのでさほど重たくなか
ろうとアメリカまで持ってきた次第です。とはいえ、なかなか手付かずのままに
なっていたのをようやく読み終えたところです。

内容はネットワーク理論や自己組織化の話です。その一例として、阪神大震災や
ブラックマンデーについて言及されています。この原本(『歴史の方程式』)が
最初に世に出た後、たった10年で「想定外」規模の大惨事(リーマンショック、
9.11や東日本大震災など)が起こるとは、誰にも予見できなかったと思います。
リーマンショックは100年に一度で、東日本大震災は1000年に一度だそうですが、
このような稀有な出来事が10年の間に生起するものだろうかという問いがあると
すれば、きっと著者は肯定するでしょう。

地震に関する話題はかなり詳細に述べられています。この本でも指摘されている
ように、阪神大震災は事前に全く想定されていませんでした。その後、活断層が
起因する地震について注目が集まりました。また、核融合の話まで扱われており、
反応炉に制御棒で反応を抑えるトピックスには、3.11を想起してしまいました。

地震の規模と発生頻度をグラフにすると「べき乗分布」が確認されます。つまり
スケールフリーの巨大地震は必ず起こるということです。一方で、研究は予測に
必要な発生時間・場所・規模を特定できるレベルにないことも述べられています。
また、発生のサイクルを歴史から探ろうとしても、100年程のデータでは46億年
ともいわれる地球の歴史からすれば、ほんの一瞬の動きを捉えたに過ぎません。
巨大地震の発生に関する誤差の範囲は、明日かも知れないし、50年後なのかも
ということは、全く役に立たないことを意味します。人間の一生の時間と地球の
活動時間にあまりに大きな格差があります。

この本でネットワークや自己組織化、臨界状態の形成に関する事例は、森林火災
の延焼、生態系の変化、絶滅種なども取り上げています。これは集団的振る舞い
がシステム全体の臨界状態を作り出し、あるきっかけでそれが一瞬にして崩れて
しまう事象です。文中にある表現では「何かが変わるためには、歪みがある限界
を超えなければならない」ような事例を説明しています。

また、第10章では金融経済の話としてブラックマンデーを扱っています。株価が
世界同時に大暴落する理由を、ネットワーク理論で説明しています。この内容は
『ブラックスワン』でのリーマンショックへの言及箇所と重ね合わせながら読む
と良いかも知れません。さらに人間の繋がりの説明には、ミルグラムの実験から
ネットワーク理論へと話が展開します。本の最後の部分では、トーマス・クーン
のパラダイム理論(学説ネットワーク)まで及び、革命や戦争の発生という歴史
に臨界状態を見い出そうとしています。

確かに90年代初め、都市銀行は13行もあり往時のバブル経済を謳歌していました。
しかし、バブル崩壊で巨大金融機関は淘汰、合併が進みメガバンクへ再編されて
います。バブルの宴の中では、悲惨な結末を全く予想できませんでした。そして
万一、日本が財政破綻した場合、どのような議論が噴出するのでしょう。やはり
「想定外」という言葉で責任を回避するのでしょうか。この言葉が論点になって
いる時機にこそ、読んでおくべき本であるように思います。


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■編□集□後□記□
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アメリカでは5月末の祝日であるメモリアルデーを迎えて、いよいよ夏が始まり
ました。すでに真夏のフロリダでは、本格的なハリケーン・シーズンが到来した
ようです。こればかりは来てもらいたくないと願うばかりです。

1年間のサバティカルなので、8月末で研修終了です。フロリダでの研修生活も
残すところあと3ヶ月となりました。早いもので、研修ブログは284日を更新し、
カウントダウンです。出発前に皆に言われた「慣れた頃に帰る」ということが、
まさにその通りになってきました。

2011年5月24日火曜日

第76号(2011.05.24)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
□―――――――――――――――――――――――――――――
■□□> コジマガ kojimag@    第76号
□───────────────────――2011.05.24─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.076
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


5月16日から新学期が始まって、授業が再開です。UCFはアメリカの多くの大学と
同じく3学期制です。もちろん、このセメスターで開講される授業科目を履修し
単位を取ったり、インターンシップや短期海外研修に参加するといった選択肢が
あります。

毎年6月にNGUへ短期海外研修として米国の大学生がやって来ますが、これは夏
のセメスターで授業の代わりに研修プログラムに参加しているのでしょう。


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■アメリカ短信 > ディズニー・ワールドの段
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☆関連サイト:http://disneyworld.disney.go.com/

アメリカで15回ほどメルマガを発行しましたが、地元オーランドの最大の名所
であるウォルト・ディズニー・ワールド(以下、WDW)についてまとまった報告
をしていません。そこで、今回はWDWについてです。

オーランド国際空港で見かける日本人旅行者は2タイプです。ビジネスや学会
へ出席と思われる人と、若い女性グループもしくは新婚さんです。前者は巨大
コンベンションセンターでの仕事関係で、後者はWDWやユニバーサルなどでの
観光目的と思われます。オーランドの宿泊は、両者ともにインターナショナル
ドライブ周辺のホテルでしょうから、UCFや私のアパートメントがある地区と
はかなり離れたエリアです。ですから普段、日本人を見かけることはほとんど
ありません。

8ヶ月の滞在期間でディズニーワールド周辺を何度も訪れて、ある程度分かる
ようになりました。山手線内の約2倍の敷地面積なので、位置関係を覚えるの
にも時間がかかります。40年以上前にウォルト・ディズニーがオーラント郊外
にあった広大なオレンジ畑を買収し、巨大な施設群を構想したのが始まりです。
ここは、今やオーランドの基幹産業の集積地に変貌しています。

敷地内には4つのテーマパークの他、野球をはじめとするスポーツのキャンプ
施設、3つのゴルフ場、シルク・ドゥ・ソレイユの常設会場に加えて、ホテル
も数多くあります。シャトルバスやモノレールが走っていますが、短期間では
とても回り切ることはできません。日本のガイドブックにある1日で2パーク
という計画はかなり無茶に思えます。TDRのようにコンパクトではありません。

テーマパークはそれぞれ個性を持っています。どのパークもゲートは一箇所で、
真正面にシンボリックな建物が配置されています。マジックキングダムは東京
ディズニーランドとほぼ同じ配置で、シンデレラ城も同じです。(発祥の地で
あるアナハイムは「眠れる森の美女」だそうで、形が違います。)シンデレラ
城を中心とした夜の花火は圧巻です。ただし、ここへのアクセスは駐車場から
入口までモノレールに乗らなければなりません。ですから帰りはTDL並の混雑
とモノレール車内の薄暗さを覚悟する必要があります。

次に、ハリウッドスタジオは映画をテーマとしたパークで、正面にはミッキー
の魔法使いの弟子で登場する巨大な帽子が象徴です。映画好きには面白い内容
だと思います。ここのアトラクションでは、タワーオブテラーやコースターは
強烈です。トイ・ストーリーのミッドウェーマニアは非常に面白く、TDRにも
導入が期待されます。また、スターツアーズがオープンしたそうで、パークの
魅力がますます高まることでしょう。さらに夜のファンタズミックは必見です。
(この春から東京ディズニーシーで公演が始まったそうです。)

そして、アニマルキングダムはその名の通り動物園です。正面には巨大な木が
あり、自然をテーマとしています。ライドで動物の生態を観るアトラクション
は、富士サファリパークといった感じです。動物以外にも恐竜や昆虫を扱って
おり、子どもには面白いパークかも知れません。大人も楽しめるのは、2つの
ミュージカルで素晴らしい公演です。なお、動物に合わせた閉園時間なので、
他のパークよりも早く閉まります。

エプコット(Epcot)はExperimental Prototype Community of Tomorrowの略
です。ウォルトが描く実験未来都市なので大人も楽しめる面白いパークです。
ゲート正面は白い球体の建物が出迎えてくれます。このパークは入口手前の
フューチャーワールドと奥のワールドショーケースに二分され、まさに万博
会場のようです。科学技術を紹介するフューチャーワールドには、関連企業
が提供する近未来的アトラクションがあり、どれも興味深く面白い内容です。
とりわけSoarin'はファストパスが昼過ぎに無くなるほどの人気です。美しい
カリフォルニアの大自然で空を舞う気分は最高です。日本の風景を使いTDRに
導入すれば、クールジャパンをPRできるので切望します。池の周りに作られ
たワールドショーケースには、各国のパビリオンに特産物などのショップや
レストランがあります。日本館では三越が伝統工芸品に加え、アニメなどの
グッズも販売しています。幸い日本館はありますが、もし自国のパビリオン
がなければきっと寂しい思いをすることでしょう。なお、閉園時間の夜9時
には、池を舞台に花火と共にショーが行われます。

WDW内のダウンタウンディズニーは、東京ディズニーリゾートで例えるなら、
JR舞浜駅のイクスピアリという感じです。どちらも個性豊かなレストランや
文化施設・グッズの専門店などが集積しています。ここは湖畔の半周を使い
街が作られています。両端のウェストサイドからイーストサイドまで歩くと
約20分ぐらいしょう。ウインドウショッピングで約2時間という感じです。

この西端にシルク・ドゥ・ソレイユの常設館があり、その意味でも舞浜駅と
よく似ています。舞浜はZEDですが、ここはLa NouBAが常時公演しています。
入場料金は日本とほぼ同じですが、現在は円高の分だけ割安感があります。
2時間弱の公演では、笑いと共に超人たちの美技に魅せられます。中でも、
アジア系の少女4人によるパフォーマンスは最高です。会場の観客たちが、
次第に彼女たちの技に惹きこまれる様子がわかります。

以上、体験レポートですが、それでも観ておくべき場所は数多くあります。
例えば、セレブレーションはディズニーが開発・造成した住宅コミュニティ
です。また、夏場に開場するウォーター関連の施設は未踏ですし、敷地内
にある3つのゴルフ場は是非、プレーしたいと思います。PGAが開催される
コースやミッキーバンカーのある有名なコースは必見でしょう。


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■UCFから
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☆関連サイト:

先日、UCFの機関がスタップ向けに発行している広報誌への寄稿を依頼されま
した。ひとつはFaculty Center for Teaching and Learningの発行"Faculty
Focus"で、もうひとつは自分が所属するCDLの"Information Technologies &
Resources"です。

日本の大学関連の機関誌で、かつ日本語ならば何ら問題ありません。しかし、
作文の前提となる読者との共通の理解がどこまでであるかが分かりくいこと
に加え、貧弱な英語表現力で筆者の主張が正確に伝わるかが気にかかります。
とはいえ、折角いただいた機会ですし、このような試練も経験しておこうと
承諾しました。

作業としては、日本ができるスタッフとテーマに関する打ち合わせをした後、
まず日本語で記事全体の内容を仕上げました。次に、英語への翻訳作業です。
文章をだらだらと書いてしまう癖があるので、英文にするには不要な部分を
大きく削除しました。記事の目安としては、700Words程度と言われていまし
たが、1100から縮められません。文章を短くすれば意味が通らなくなります
し、凝った表現ができないので致し方ありません。これをきちん意味が通る
英文にするには、ネイティブチェックが必要です。そこで、日本語が堪能な
Fさんにアポイントメントをとり、何度かオフィスに伺うことになりました。

ここで英文のチェックを受ける時は、久しぶりに学生の気持ちです。自分が
書いた文章が理解してもらえるか?というのが一番の課題です。ざっくりと
読んでいただき、ストーリーはすんなり理解してもらえたようです。しかし
表現力や前提の知識に違いがあり、何箇所が説明を求められれる記述があり
ました。その後、文章での主張と結論の確認をして、とりあえずのタイトル
決めを助けてもらいました。

ひとつ終わりました。今週はもうひとつの文章チェックです。


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■編□集□後□記□
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ディズニーといえばファンタジーぽくってと思う人も多いかも知れません。
しかし、サービス産業では極めて注目すべき企業のひとつで、その動向は
チェックが必要です。

パークの入場料金は80ドル以上なので、日本のそれよりもかなり高額です。
UCFの観光学部の先生とのお話で、そんな高額でも全米や世界中からお客を
呼べる企業はすごいう点を指摘されていましたが、全く同感です。喜んで
金を支払い、また来たいと思わせるアトラクションやサービスには見習う
べきところが多いと思われます。同時に、日本のホスピタリティ産業には
まだ発展余地が残されているようにも感じます。

2011年5月10日火曜日

第75号(2011.05.10)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
□―――――――――――――――――――――――――――――
■□□> コジマガ kojimag@    第75号
□───────────────────――2011.05.10─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.075
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


日本のゴールデンウィークに合わせて、フロリダ半島を南半周するドライブへ
出かけました。そこで、今回はいつもの記事をお休みして、南フロリダ観光を
メインとした内容に変更です。

事前知識として地図を参照するのが一番ですが、簡単に位置関係を説明します。
フロリダ半島はアメリカの南東に位置します。地図でいえば右下にあたります。
オーランドはセントラルフロリダですので、丁度真ん中にあると考えてよいと
思います。半島の東が大西洋、西がメキシコ湾です。

フロリダ半島は東西よりも南北に長く、南先端まではオーランドからも結構な
距離があります。さらに半島の先には島々が繋がり、これをフロリダキーズと
いいます。キーズの一番端がキーウェストです。

なお、文中に出てくるI数字は、インターステイト道路の番号のことです。

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■フロリダ観光 > マイアミビーチの段
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フロリダ最大の都市はマイアミで半島の先端あたりに位置します。ただし州都
ではありません(州都は北部にあるタラハシーです。)マイアミはオーランド
から車でI95をひたすら南下し、4時間ほど走ります。片道は約350Kmですので、
日本ならば東京=名古屋くらいの距離に相当します。ここはビジネス金融街で、
日本の総領事館もここにあります。南米系の移民も多く、スペイン語が主流に
なっているエリアもあり、その周辺では「英語が話せます」という表示もある
そうです。

マイアミはビスケーン湾を隔てて、ダウンタウンとビーチに二分されています。
ダウンタウンは碁盤の目のように構成されおり、市内には電車(メトロレイル
やメトロムーバー)も走っています。スーツを着たビジネスマンの姿を数多く
見かけます。

ハーバーに隣接しているベイサイドマーケットプレイスは、ジェットボートや
観光船などの発着場所になっています。ここには多くのショップがあり、日本
に進出したHoopersやフォレストガンプに登場するシュリンプ店があります。

ダウンタウンから東へビスケーン湾を橋で越えると、そこがマイアミビーチ市
で、有名なマイアミビーチがあります。大西洋は波が高く、サーフィンに絶好
の海でしょう。ケネディスペースセンターに近いココビーチよりもサーファー
は多いような気がします。また、ビーチの南方には豪華クルーズ客船や貨物船
が、往き来するのが見えます。

このビーチに並行したストリートには、ホテルのテラス式のレストランが続き、
多くの人々が水着のまま行き交います。マイアミビーチは昼間から音楽と食事
や酒などによって、非日常な空間です。家族連れよりも、カップルや若者達が
歩いていたり、かなり開放的な雰囲気です。(これが都市の魅力なのかも知れ
ません。)

このメインストリートに沿って、カラフルな小洒落た感じのプチホテルが軒を
連ねています。いろいろな映画のロケ地になっており、「ボディガード」にも
出てくる豪華なホテルもあります。この辺りを含めてアール・デコ地区が構成
されており、建物の色使いに特徴があります。デザインを意識した街づくりが
実践されていることが分かります。

『地球の歩き方』によれば、有名なストーンクラブのレストランがあります。
この店の扉にはドレスコードが表示されています。ちょっとラフな格好をして
いただけに、入店できるかどうか心配でした。幸い断れることなくテーブルへ
案内されました。ここで名物のストーンクラブ(小皿)にクラムチャウダーと
カラマリ・フリット(イカの唐揚げ)、コールスロー・サラダを注文しました。
ストーンクラブは、名前のごとく甲羅がとても固いカニです。カニの甲羅は、
まるで陶器のようです。とりわけ美味というわけではありません。旨さならば
日本で食すカニの方が上でしょう。


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■フロリダ観光 > フロリダキーズの段
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国道1号線(US1)はアメリカの東海岸を南北に縦断しています。ボストンから
NY・フィラデルフィア・ワシントンD.C.を経て、フロリダ半島へと繋がります。
そしてマイアミを抜けて半島の先端に達すると島々を渡って、キーウェストが
終着点となります。

まず、マイアミからフロリダ半島の先端でUS1に入って、キーウェストまでの
ロングドライブが始まります。キーラーゴからいくつもの島々を通り、左右の
車窓からは珊瑚礁の美しい海が望めます。抜けるような空の青さを反射した海
は本当に綺麗です。マラソンの街が終われば、いよいよセブンマイルブリッジ
です。広く青い海の中に架かるセブンマイルブリッジには感動です。約10Km
以上の続く長い橋は、コマーシャルにも使われるような絶景ポイントです。

マイアミから4時間のドライブで、ようやくキーウエストに到着します。第一
印象は、キーウェストは日本の軽井沢や湘南の観光の町という感じです。この
島は東西が長く南北は短く、南の端から北のピアまでは30分以内で歩けます。
自転車やバイクをレンタルする観光客も多いようです。当初は、小さな島を
イメージしていましたが、実際はちょっと違っていました。

見学ポイントはいろいろあります。まず最初に、US1の起点となるポイントへ
寄ってからヘミングウェイの家を見学です。ここでは彼の猫好きがよく分かり
ます。また、日本語の案内をもらえますので、文学に疎い自分には助かります。
その後、最南端の地まで歩いてゆき記念撮影。ここから海の向こう90マイルは
キューバです。

次に、最南端からウインドウショッピングしながら北上です。キーウェストの
メインストリートは観光地という雰囲気が出ています。いくつものお土産屋や
レストランが立ち並んでいます。最後は、有名なキーライムパイの店でお茶と
キーライムパイをいただき予定は終了です。

サンセット前にはキーウェストを離れて、宿泊先のキーラーゴまで戻ります。
Bertie Higginsの歌 "Keylargo" を聞きながらのドライブです。


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■フロリダ観光 > サラソタからタンパベイの段
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フロリダキーズからフロリダ半島に戻り、I75を使いエバーグレイズ国立公園
の中を走り抜けます。半島を西へ横断するという感じですから、かなりの距離
を走ることになります。道路の左右はブッシュや森がはるか地平線の彼方まで
続く光景です。これが夜だったら、かなり恐怖感があるだろうと思いました。
また、こんな一本道で速度違反を取り締まっているパトロールにも驚きます。

大自然のエリアを抜けてからは、フォートマイヤーズ(レッドソックスの春の
キャンプ地)を通って、サラソタ(上原が所属するオリオールズのキャンプ地)
まで移動です。市内からさらに西に進み、橋を渡ってロングボードキーに入る
とようやくメキシコ湾が見えてきます。この辺りは地図上では細長い島ですが、
お金持ちが住んでいるような家やきれいなゴルフ場があって、高級なイメージ
を持ちました。ここでは、創業1905年というコロンビア料理の有名レストラン
へ出かけました。本店はタンパですが、フロリダにはいくつも支店があります。
平日だけに店も空いており、スペイン風のパエリアとステーキを堪能です。

サラソタのビーチからは180度に渡って水平線が見え、地球が丸いことも確認
できます。観光客もそれほど多くなく、ゆっくりと滞在するには良い場所です。
また、ラッキーなことに、夕陽は雲に隠れることなく、サンセットを迎えます。
太陽がメキシコ湾の水平線に接してから、完全に海へ沈むまでのシーンを見る
ことができました。これはかなり感動的な光景です。

サラソタから北上して、セントピーターズバーグへ向かいます。I275でタンパ
ベイを越えるサンシャイン・スカイウェイ橋は圧巻で、通行料金の2.5ドルを
支払う価値は十分あります。巨大な斜張橋で、セブンマイルブリッジとは一味
違った迫力があります。かなり高い位置まで上るので、橋からの眺望は最高で、
対岸のトロピカーナ球場(レイズの本拠地)なども遠くに見わたせます。

セントピーターズバーグにはダリ美術館があります。平日にも関わらず駐車場
は満杯で、かなりのお客さんがいます。ここでシュール・レアリズムの作品を
鑑賞です。オーランドへの帰り道は北東方面ですが、またタンパベイを渡って
レストランへ寄り道です。このレストランの窓からはタンパベイが一望でき、
魚が水面を跳ね回っています。前に来たときは、眼下の海にエイ(デビルレイ)
がおり、ちょっと贅沢な光景です。ここではシュリンプカクテルとともお薦め
のサーフアンドターフを堪能です。お腹も満たされて、I4で100マイルの道を
帰ります。2時間ほど走ると、WDWの近くにあるミッキーの形をした電信柱が
見えてきました。これでオーランドに戻ってきたという実感が湧きます。


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■編□集□後□記□
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メールの文字だけで旅情を伝えることは、大変難しいように感じました。その
意味で作家の才能には憧れます。やはり写真などでフォローがないと、十分に
伝わらないでしょう。アメリカ研修ブログには、写真をアップしていますので、
こちらをご参考してください。リンク先は.NETに提示しています。

2011年4月28日木曜日

第74号(2011.04.28)

□ Nagoya Gakuin University, Faculty of Economics
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■□□> コジマガ kojimag@    第74号
□───────────────────――2011.04.28─――
□ Kojima seminar Mail Magazine, Vol.074
*等幅フォント(MSゴチックなど)でご覧ください。


フロリダはすっかり夏模様です。アメリカの大学は春学期のテスト期間を迎え、
学生たちは忙しそうです。

さて、スペースシャトルのエンデバーがラスト飛行となり、4月29日(金)の
午後(現地時間)にKSCから打ち上げが予定されています。オバマ大統領一家
も見学に来るということで、地元ニュースではシャトルの話題で盛り上がって
います。


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■アメリカ短信 > 想定外の規模と範囲の段
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☆関連サイト:http://bit.ly/kojimag054

今回の激甚災害には「想定外の規模」という形容詞が目立ちます。これにより
地震学者や防災学者の免罪符になるとは思いませんが、再び科学技術とは何か
ということを考えさせるような出来事です。超巨大地震とそれに起因する連鎖
が現代社会に与えた事実からいろいろと思いを巡らせました。

まず、ありえないことが起ったことで『ブラックスワン』を思い出しました。
これはコジマガ第54号で取り上げた本ですが、我々は将来に起こりうる確率を
正規分布という「月並みの世界」で捉えていたのかも知れません。経済分野の
リーマンショックを含めて、この世の中には予測を越えた事態は起こりうると
いう事実を忘れがちです。これに関しては、4月7日付の日経新聞の経済教室に
今回の大地震とべき乗分布について触れられています。

たしか関連本に「名もなき英雄」の話題がありました。これは、惨事を未然に
防いだヒーローを取り上げています。事前の正しい措置によって、惨事が起こ
らないので、その功績は誰も知らないままという話です。今回とは事態が違い
ますが、小学校の校舎の2階から直接、避難できる橋を作った市議の話が新聞
に掲載されていました。大津波が襲いましたが、幸い子供達が無事だったので
その功績が確認できました。

次に、ありえないことによる最大の被害が原発事故です。これまでの安全性を
高める努力が無残なまでに消失しました。原発は99.9%安全で、小数点以下を
さらに小さくする努力を電力会社は続けているという話をかつて聞いたことが
あります。たしかに地震後に運転は自動停止できましたが、発熱が収まるまで
の時間が長いという点が問題です。制止に必要な冷却装置が津波によって破壊
されたことで、最悪の事態が生じています。

そして、被害の連鎖です。生産地が被災したことで、サプライチェーンが機能
不全に陥りました。このシステムの弱点を指摘する論が新聞でも散見されまし
たが、ネットワーク化された現代社会において代替となる手段を見つけるのは
容易でありません。グルーバルな競争下で、世界生産システムから外れること
は国全体の経済力を弱めてしまうことになります。

加えて、風評被害です。日本では福島産の農産物が代表的な例のようですが、
世界市場で見れば、日本全体が対象になっています。周知のように、食物以外
にも工業製品の出荷まで支障が来たしています。日本への観光や留学を控える
動きも見られます。アメリカでの報道を見ていても、正確な情報や知識を持た
なければ、心配や不安になるのも理解できます。日本から積極的に情報を発信
し、一刻も早いジャパンブランドの回復が望まれます。

このように巨大地震のインパクトは、我々の想像を越えた範囲に及んでいます。
科学はさまざまな叡智を結集して、自然や未来へ挑戦してきました。ある意味
で、我々人間に「慢心」があったのかも知れません。統計学で扱う正規分布は
不確実が伴う事象を前にして、多くの有益なヒントを与えてくれました。今回
『ブラックスワン』の登場で、これまで何となく信じていた平穏無事な日常の
連続が終焉を迎えました。あらためて、将来は正確に予見できないということ
を思い出させてくれました。


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■UCFから
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☆関連サイト:

学期末が近づいて、授業時間内で学生のプレゼンが始まりました。これは成績
の最終評価に大きく影響するだけに学生も真剣です。1回の授業につき発表者
は5人で、4日間行われます。

2週間ほど前に発表順序を決めました。まず、全員にくじを引かせて選択順序
を決定します。次に、一番くじを引いた学生からスケジュールの一覧表に希望
する順番を埋めてゆきます。彼らの選好順序を見ていると、まず2日目および
3日目が埋まります。そして、最終日が詰まってしまうと残りは1日目だけに
なります。このような学生の行動は、日本と同じで大変興味深い光景でした。
(まるで経済学の例題を見ているようです)

さて、実際の発表で一番印象深いのは、アメリカの大学生は1年生であっても、
かなり自信を持ってプレゼンをしていることです。皆がチーティング・シート
を手に持っていますが、これを読み上げるようなことはしません。この自信の
裏付けは、それまで授業の課題にされてきた事前調査をしっかりこなしている
ところにあるように思います。全員がPowerpointに加えて、PDFやYouTubeなど
を駆使しており、自分の意見である結論も明確にできるプレゼンレベルの高さ
に感動しました。

学生が周到に事前の発表準備をしているということは、さまざまな面から推察
できます。まず、チーティングシートについてです。日本では、ルーズリーフ
に手書きの台本というスタイルをよく目にします。こちらではスライドに対応
したカード型を使っています。ここに台本が印刷または貼り付けられており、
上手い利用方法に納得です。

そして、発表者はきちんとした格好をしています。普段は男女ともにTシャツ
に短パン、サンダルというかなりラフな格好ですが、発表の時には男子学生は
襟付きのシャツにスラックス、女子はワンピースを着ています。ですから教室
を見渡すと、当日の発表者は誰かが一目瞭然です。

さらに、授業の始まる前には、事前に教室のプロジェクタに投影し、自分たち
でチェックを行っています。プレゼンの冒頭には、きちんと自己紹介を兼ねた
挨拶もできています。ピアレビューの評価表を見ると、テクニカルな部分より
内容重視になっていますが、ほとんどの学生がプレゼンの技術的側面もきちん
とできています。

学生の発表テーマはさまざまです。内容には、一年前にメキシコ湾で起こった
BPの石油流出事故、若者のfacebook、ネットでの不正アクセス、遺伝子工学の
視点での食糧問題、子どもがTVをみる影響、学生の仕事が与える影響、教育へ
対する州の財政支出・・・など、さまざまです。特に、自分の専門に関わった
テーマというわけではありません。

発表に至る過程には、学期の始まりに各自がテーマを決めて、それぞれ調査を
進めます。最初にネットでのツールとしてCQやEBSCOを使って、関連の文献と
議論の集約結果を授業に持ち寄ります。図書館のオンラインサービスの使い方
では、研究の基本スタイルを実践的に覚えることができます。次に、それらを
まとめる作業(参考文献リストや引用方法)を行ないます。文献の要旨を書く
課題では、大学のライティングセンターを活用させたり、学生同士のダメ出し
というピアレビューを実施していました。さらにスプリング・ブレイクを利用
してインタビューを実施しなくてはなりません。このようなプロセスを経て、
研究テーマを煮詰めてゆきます。

約10週間にわたる週2回の対面授業と1回のオンラインによって、内容の豊富さ
でかなりのレベルに到達することが分かります。さながら日本では、ゼミでの
研究という印象を受けました。このような調査作業は常にファイリングをして、
数回にわたり教員が確認をします。今回のプレゼンは、これまでの作業を下地
にして最終的に自分の意見をまとめた発表です。

プレゼンに関する自己・相互評価表を自分で印刷しておき、発表直前にそれを
教員に渡します。すると点数やコメントが加えられて、授業時間の最後に返却
されます。即時にレスポンスをもらえるのは、学生にとって有益なことと思い
ます。

以上のように学生も教員も大変ですが、とても参考になった授業形態でした。


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■編□集□後□記□
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☆関連サイト:http://www.ngu.jp/system/article/detail/1580

NGUでは新学長の元、新たな年度を迎えているようです。ネットからの情報で
知るだけですが、これまでも大学人にはない発想と実行力を備えている学長
だけに、新しい変化の予感がします。どこの大学でも、何かと理屈ばかりを
述べて、前向きの行動や変化を拒んできた大学人が多く見られました。それ
によって大学は時代や社会から取り残されてきたのかも知れません。しかし、
これからは大学であっても社会の変化の速さにキャッチアップする適応能力
が求められます。

そのために、まずはトライをしてから課題を洗い出し、改善計画を示した上
で再実行が必要でしょう。従来のPDCAサイクルからDCAPサイクルという変化
が重要なのかも知れません。